菩薩

チーズとうじ虫の菩薩のレビュー・感想・評価

チーズとうじ虫(2005年製作の映画)
4.0
生まれたからには死なねばならないと言う当たり前の事実を見つめているだけだから特にこれと言って何も無いのだが、「私より先に死ぬ母」は同時に「母より先に死ぬ私」でもあって、同じく遺された者に課される「死」と言うものも、全く別の物の様に見えているのだろうなと。祖母の遺体と対面するお孫さん達の反応がやはり興味深く、そそくさとその場を立ち去る幼い弟2人とは対照的に「死」とは何かを朧げながらでも理解し始めたであろうお姉ちゃんは、複雑な表情を浮かべながらもその姿を見つめ続けようとする、からのまだ一歳程度の末っ子ちゃんの「踏んづけ」の流れ、そこには当然「死」に対する恐怖や畏怖と言うものがカケラすら無い。ずっと死に対する恐怖とは何なのかを考えていた。今の自分にそれがあるかと言えば無いと言った方が正しいのだが、親より先に死ぬ事に対する後ろめたさはある、本来はこれを恐怖と呼んでもいいのかもしれない。にしても穏やかな表情をしている、うちの祖母は最後自ら命を絶ったのでもっと苦悶の表情を浮かべていた。再起動の可能性を消失した人間の身体はいつ見ても不思議な物体だ。
菩薩

菩薩