wii

チーズとうじ虫のwiiのレビュー・感想・評価

チーズとうじ虫(2005年製作の映画)
5.0
同日に『VORTEX ヴォルテックス』を観て、この作品とのおおきな共通点である死について、ぐるぐる考えている。

『ヴォルテックス』はフィクションで、死にいたるまでの苦味をひたすら凝縮したよう。でも死者を悼むことや、彼らの愛した人生の積み重ねと終の住処が解散していく様子までを丁寧に描いていて、近親者の老いと死というテーマがフィクションの中でも凄まじいリアリティとともに身体を蝕んでいく"良薬口に苦し"的な感覚が素晴らしかった。
一方で本作、母親の死を包み隠さずに実録する中で見えるのは、さわやかで前向きな死に対する当事者たちのきもち。死に直面することは否定せず、それまでの道のりをどう歩もうかみんなで考えていく様子が印象的だった。世代をまたがった交流の末、安置された遺体を踏んづけてしまう子供のシーンには思わず笑ってしまった。1番最近に生を受けた子供と新鮮な遺体との邂逅というか、家族を継承していくための記録映像として見ると、世代を継いでいくこと、その間に亡くなったひとを記録を通して偲ぶこと、その意義がとても大切なものに思われる。
どちらも故人の遺したものを受け継ぐかとうか、また住居や部屋を整理するシーンが印象的だ。『チーズとうじ虫』は作品そのものが記録として残る一方で、『VORTEX ヴォルテックス』のラスト数カットのがらんどうな住居の写真が見せてくれたように、フィクション・ドキュメンタリーに関係なく、両作品が人の死にちゃんと向き合うための作品なんだとしみじみ思う。
身近な不幸に常に備えて生活する必要はないと思うけど、記録を残すことや身の回りのものに愛着を持つこと、自分の1番奥の奥に刻みつけるという意味で大事にしたいなあ。
wii

wii