なべ

ボルサリーノのなべのレビュー・感想・評価

ボルサリーノ(1970年製作の映画)
3.6
 リオの男が急に観たくなって探したんだけど全然配信されてない上、Blu-rayも廃盤。仕方なく、ジャン=ポール・ベルモンドが出ている他の作品を探したもののやっぱり配信されてないんだよなあ、これが。それでやっとみつけたのがこのボルサリーノのレンタルDVD。

 おおー!ベルモンドもドロンも若い。こっぱずかしいくらい若いぞ。しかしボルサリーノを観るなんて何年ぶりだろう。昔はテレビの洋画劇場でよく放映されてたけど、最近は午後ローでも深夜映画でも取り上げないもんなあ。放映権なんてとっくになくなってんだろうな。
 ぼくが映画館に通い出した頃は、フランス映画がそこそこ公開されてて、アラン・ドロンやジャン=ポール・ベルモンドの新作ともなれば必ず上映されてたもんだ。
 そんな彼らが急に恋しくなってるのはぼくだけじゃないらしく、もうすぐジャン=ポール・ベルモンド傑作選が公開されるみたい。

https://belmondoisback.com/

あいにくリオの男やカトマンズの男はないけど、何本かは観にいくつもり。

 閑話休題。久々のボルサリーノはなかなかの美酒だった。
 2人のチンピラの出会い、荒っぽい友情を育みながら街の顔役へとのし上がり、マルセイユを手中に収めるって暗黒街のサクセスストーリーだ。
 今どきの映画と違い、物語の進め方は雑。けど、その雑さが独特の勢いを生み、粋な劇伴で小気味よく仕上がってるのはロマンだなあ。ああ楽しい。いや、懐かしいのか。
 成り上がっても成り上がっても満足できず、どんどん寡黙に無表情になっていくドロンに対し、変わらぬ陽気さと人情味を発揮するベルモンドの対比が実にいい。
 昔は気づかなかったが、寡黙で無表情なドロンがちゃんと演技してるのな。フランソワ(ベルモンド)が旅に出ると聞いた時のロッコ(ドロン)の顔ときたら!すがりつくようなじっとりした目でなんとも言えない表情をするんだわ。今ならブロマンスな解釈で全くおかしくない演技。
 このまま一緒にいたらいずれ対立するときが来ると思い、別離を選ぶフランソワ。別れを切り出されてショックを受けるロッコ。こういう宿命的な別れを男同士に演じさせる妖しさがフランス映画にはあるんだよなあ。もし観るなら、この時のアラン・ドロンの表情は絶対に見逃さないで!
 あ、そうそう、2人の水着のサービスカットもあるよw
 もちろんお目当のベルモンド兄貴は最高だったよ。豪快というか軽快で頼り甲斐があって、ちょっと女にだらしない。そりゃ好きになるって。
 ちなみに昔の吹替ではベルモンドの声を山田康夫がアテてた。リオの男を観ると顕著なんだけど、ルパン三世のルーツはベルモンドだったんだって納得できるから。

 さあ、これからしばらくベルモンド祭が続くよ。みんなも粋でイナせな兄貴の勇姿を拝みに行こうぜ。乗り遅れるな!
なべ

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