この監督はラストシーンの天才ですか。
「ある画家の数奇な運命」も非常に素晴らしかったが、このラストはオールタイムベスト級。
反体制劇作家ドライマンのアパートを盗聴し続けるヴィースラーが、ある事件をきっかけに彼らにシンパシーを抱き、冷徹なシュタージから素の人間へと変貌していく様子を、彼の変節の要因と推察される小さなエピソードを散りばめながら、抑えたタッチで精緻に描写していくところは、地味ながら見応えのあるグランドレスリングの攻防のような燻銀の味わい。
また、権力に翻弄され不安定に心が蛇行していくクリスタは、抑圧されて不本意な選択を迫られる表現者たちの象徴のようであり、彼女と大臣の関係性は、腐敗した権力に支配されたこの社会の全体像を端的に示しています。
権力を持つと人間はクズになるのか、クズが出世しやすい社会なのか…
格調高く綺麗にハマりすぎた抜群の邦題から溢れ出すドヤ感が鼻につき、なんとなく見るのを避けていたのですが、やはり捻くれた偏見はいけません。
評点爆上げ不可避の究極のラストのためだけでも一見の価値大あり。