三月

善き人のためのソナタの三月のレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
4.2
いつか観ようと思いながらもやっと。良い作品だった…折目正しい終幕。映画館で観たかった。

東ドイツの「社会主義」の国家の元で、自分の任務を冷酷なまでに真面目にきっちりと遂行する国家保安省(シュタージ)の局員が主人公。

反体制を疑われた劇作家とその女優の恋人を完全監視する中で、無慈悲で無感情に見えた男の体の中に、静かながらも熱い血が流れ、目に光が宿る。
主役の演技と存在感(あの大きくてきれいな目も含めて)が非常に効果的で、序盤のどこかロボットを感じさせるような並行移動の動きなどは、少しユーモラスですらある。
途中、小さな男の子とのほんの少しの会話の中に、彼の変化を描くあたりも好き。

それにしても、報告書などの資料があんなにしっかりと資料館で閲覧できるとは…負の遺産になるのでしょうが、そこからラストにつながる静かな人生の交差が素晴らしかった。
三月

三月