久々に重く美しい感動作を観た。
舞台はベルリンの壁崩壊前の東ドイツ。
私が幼いころのドイツ。記憶にあるのは崩壊した壁の映像。
それ以前に隠された抑制された社会主義国の姿を私はまったく知らなかった。
主人公は尋問と監視のプロ。冷酷ささえうかがわせるヴィースラー大尉。
そしてそのシュタージの監視下となる劇作家ドライマンとその女クリスタ。
冷酷なシュタージとして生きてきたヴィースラーにとって、盗聴器で初めて触れる、
交わされる愛の言葉。
自由な思想。
ソナタの調べ。
この物語が描くのは、東と西でもなく、悪と善でもない。
どんなに固められた権力の下でも、人間の本質は縛ることはできない。
人は本能を揺さぶる芸術や愛に触れたとき、人はこのヴィースラーのように生きる歓びに震え、たとえ、名声や肩書きをなげうっても、それを守りとするのだろう。
それが芸術や愛の美しくも恐ろしいちから。
ドライマンとヴィースラーが最後まで、一度も言葉を交わすことないというラストの美学にため息がでました。
本当に儚くも美しい映画。