原作読了
カズオイシグロは、よくわからないけど、好きだなあ
「インドの執事」に象徴されるスティーブンス氏の理想の執事像は、メイド頭のほのかな恋心にすら気づかない(ことにする)程度のものであった、と、老境に差し掛かりやっと気づく
せつない
ミスケントンにしてみたら、スティーブンスシニアを看取った、ユダヤ人メイド解雇の苦しみを分かち合った、ココア会議、執務室に花を飾る、ここまでしたのに、他愛もない恋愛小説を巡ってあんなに近くにいるのに、何もしてくれない。私は特別な存在じゃないのか?
これなら、見た目も仕事もソコソコだが、積極的にアタックしてくるベン氏に一縷の望みを抱くのも無理はない
せっかく育てた後輩に「30過ぎの年寄女に恋はわからない」まで言われちゃうし。
ミセスベンとしての人生は失敗だったが、娘の母としての人生は悪くはなかったみたいだし、孫のおばあちゃんとしての人生はなかなかいいものになりそうね
惜しむらくは、原作のラストシーン、「照明の灯った橋でボロ泣きして、通りすがりのおじさんが差し出してくれたこ汚いハンカチに泣き崩れるスティーブンス氏」がなかったこと
アンソニー・ホプキンスのみっともない不器用な号泣、見たかった