いののん

日の名残りのいののんのレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
3.9
渋いオトナの映画。高貴なお方のお屋敷に、生涯を捧げた執事の回顧録。利発で正論を吐く、賢い女性にやられてしまったお話。


徹底したプロ意識を持つ彼らは、自らの気持ちは隠さねばお勤めできないと、気持ちを隠すものの(女はホントは気持ちをあらわしたく、男は自らの気持ちに気づかないふりをする)、それでも時折、高ぶってしまうあふれ出てしまう抑えてしまう蓋をしてしまうあふれ出てしまう、その揺らぎを、名優アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンが織り成す。のであるから、できた織物は、当然、イギリス王室御用達のような、最高品質のシロモノとなる。孤独に震える夜に、くっきりと孤独を浮かび上がらせながらも、それでも心を温めてもらえる、そんな織物となるだろう。


第1次大戦後から、第2次大戦後まで。
そうか、こうやってナントカ卿のお屋敷で国際会議が開かれたのか、とか、高貴な方々による政治からプロの政治への転換の意味とか、でもプロに任せる政治が果たして良いと言えるのだろうか?とか、これは個人に尽くすというよりも館に尽くした物語かな、とか、そうすると日本史においては、とか、そういったことも大変興味深かった。恋愛云々よりも、私にはそちらの方が、興味深かった。つまりは、薄暗い地下の蔵から選ばれたワインのように、色んな角度から味わい深さを堪能できる良質な映画、ということなのだと思う。



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*それでも、書物が何なのか知りたがるエマ・トンプソンに、それ以上ほじくるのはやめなさいっと、私は心の中で説得してみた。そりゃあ、恥ずかしいっす。

*えっへん♪
GOTのサーセイが出ていたこと、わたしは見逃しませんでしたあ。25年前の映画なのに、わかっちゃった。うれちい。ちいさなよろこび。

*原作未読


〈追記〉
その後、原作読みましたー!2023年4月
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