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デコーダーのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

デコーダー(1984年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 危険、怪電波を発するヤバ映画であった。しかとその電波受け取った(洗脳済)。

 そもそもThrobbing Gristleの過激派担当ジェネシスPオルドリッジや、薬物中毒且つ若者文化の象徴クリスチーネFが出てるあたりで、「あの界隈か…」と察せられる。人体改造による自由を得ようとする生半可じゃない人ら(本当)と、美しきドラッグ中毒者たち(本物)、そして下敷きとなる物語はウィリアム・バロウズ(カメオ出演も!)。いや、バロウズ原作ならばこの妄執っぷりは再現度に貢献して◎といったとこである。あのヤバい世界を体現した映画があるだけで嬉しいし、実際に見ると飲み込まれる快楽と、それを理性がなんとか止める瞬間がいくつかあった。

 ザッピングするかのように目まぐるしく変わるカット。奇怪に鳴り響き、一時も途絶えることのないインダストリアルミュージックとノイズ。世の中を変調によって異世界へと変えてしまう。サンプリングされる暴動の映像は現実であるわけで、当時の緊張感の高まりの果てに今作が生まれたことがわかる。まさにバロウズ提唱の現実のカットアップが異界を生み出すように。

 頻出するカエル…そういやニューオーダーでやたらカエルの声がサンプリングされた曲があってなんでやねんと思ってたけど、もしかしてここいらがルーツか?「君たちはどう生きるか」の一瞬出たカエルのたかる映像しかり、触覚的恐怖を煽るのに重宝されるようだ。しかし、まさかカエルの大絶叫を映画館で聞くと思わなかった。触感を伴って、なかなかキツいシーンだった。それでもカエルとクリスチーネFの組み合わせは妙に色気があって、ビリーアイリッシュと蜘蛛の組み合わせ思い出した(美女とゲテモノという「不思議の国のアリス」っぽさ)。

 色んな陰謀論に取り憑かれた人々を思う。海外のstop the oil活動家と大差ないのが今作の陰謀論の浅はかさであった。目先のものを攻撃して解決には至らないものである。なんか文化圏としては大好きな方なのだが、思想としてはノれない、危なそう。ハンバーガー屋が怪電波発してるってなんやねん。異物混入とかじゃないんかいという笑(薬物中毒の支離滅裂小説原案だからしょうがない)。何故か今作観る前に滅多に行かないマックに行ったのだが、もしかして、電波か???(ノイズの入ったカセットを店内で大音量で流す)。

 ラストカットの四画面のうち、駆動し続ける男女の抱擁のループの力強さ。死した老人を傍に、暴動を傍に、最後まで動くのは愛である。

 その回転を支えるのはまさにビデオ映像とインダストリアルノイズなのである。
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