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ホースメンのsleepyのレビュー・感想・評価

ホースメン(1971年製作の映画)
4.2
フランケンハイマー映画=走る *****





フランケンハイマーといえば本物指向で、リアルさ、迫真性を追求し、
素材に心血を注ぎこんで圧倒的な映像を見せてくれた監督さん。特に『グラン・プリ』『ブラック・サンデー』等。監督が当時興味を抱き、没入したのがアフガニスタンの騎馬民族の騎馬競技であった。それで負傷し、失意と恥に打ちのめされて部族を離れ、過酷な大自然の中を放浪し、父との確執を乗り越えて自分を取り戻す物語。この騎馬競技、賭け闘羊のダイナミズム、雄大で荒々しい当地のパノラマ、部族の伝統的な生活の様子、過酷で独特な風土を、素人のエキストラを動員し、皆の汗、体臭、風、土埃、熱気、馬の息吹まで手に取るようにフィルムに焼き付けた。徹底したリサーチとロケハンの労力を費やしたことがわかる(ほぼ)オールロケの入魂の1作。時代は戦後であり、族長が見上げた空高くにミグ(?)らしき戦闘機が爆音を挙げて飛ぶ・・。

特に前半のハイライトである競技のシークエンスの生々しさと疾走感、臨場感は只者ではない。劇場で観たかった・・。「走る」ものを撮らせると超一流のフランケンハイマー。『グランプリ』『フレンチ・コネクション2』・・。各部族を代表する騎馬の強者30人ほどが馬に乗り、山羊(?)の屍を広大なトラックで奪い合う競技である。走るカメラ、ダイナミックな空撮、クローズアップ、振り下ろされる鞭(これでしばきあいながら山羊を取り合う。格闘技版ポロみたいである)、怒号、いななき、歓声、蹄の音、照りつける太陽、立ち昇る湯気・・。

手ひどい怪我を負い、気絶し屈辱にまみれたウラズ(シャリフ)は、従者の御付き(高貴な出である)と旅に出て、さまざまな出会いをする。そこで出会う美しき女性との不器用な愛情ととまどい。失意と回復。珍しく(?)苦悩するシャリフが印象的だった。劇場公開のあと、VHSになったきりだったが、近年某会社の復刻シネマライブラリー・シリーズで発売。現在廃盤状態。

ちょっといびつな感じもするしフランケンハイマーではあまり語られることの少ない印象の本作だが、フランケンハイマーを語る上で外せない1作と思う。シャリフ作品としても前述『ドクトル・ジバゴ』とともにもっともシャリフを堪能できる1作と思う。撮影はジャン・ルノワールを伯父にもつ、名手クロード・ルノワール(『ピクニック』(ルノワール監督版)、『河』『血とバラ』等)、音楽もあのジョルジュ・ドルリュー。
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