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海外特派員のodyssのレビュー・感想・評価

海外特派員(1940年製作の映画)
2.5
【ヒッチコック嫌いの弁――ヒッチコックの映画(その8)】

BS録画にて。

ヒッチコック嫌いの私としてはあまり期待せずに見たのですが、まあヒッチコックだし、この程度だろうなというのが感想。

まず、この映画の筋書は第二次世界大戦ヨーロッパ戦線の開始直前に始まっているわけです。そして当時の情勢が或る程度下敷きになっている。英国や米国、ドイツ、オランダと言った現実の国家の名も出てくる。
でも最初に、これはフィクションだと断っているんですよね。

たしかに作中の平和団体だとか、某重要人物をめぐる駆け引きだとかは、現実の第二次世界大戦を知っている人間からすると「はあ?」なんですけど、この映画が作られたのは1940年、大戦が始まって一年しか経っていない時期だし(この頃はアメリカはまだ参戦していないんですよね、正式には。もっともこっそり連合国を支援はしていたんですけど)、作る側だって情勢をそんなに分かっていたわけではないだろうとは思う。

だけど某重要人物が秘密条項を黙秘している、ってのがどうにもね。しかもこれ、最後まではっきりとは示されていないんですよね。それが平和の鍵だとか何とか言われても、こっちとしてはよく分からない。ちょっとだけ漏らされる言葉を補ってみると、秘密の同盟があって、A国が攻撃を受けたらB国はA国に味方して参戦する、みたいな条項なのかな。でも、それなら秘密にしても仕方がないことでしょう。A国が攻撃されたらB国は黙っていない、というのは公けにされてこそ第三国がA国を攻撃するのをためらわせる、つまり戦争抑止の効力を生むわけでね。

またその重要人物を誘拐するのに、なぜそれと並行して彼を殺したと偽装しなければならないのか不明。そんなの、殺された人物がニセ者だってのはすぐバレるに決まってるジャン。誘拐だって、逆に戦争が近づくだけでしょう。外交問題になるし。スパイ合戦で秘密条項を盗みだすとかいうなら分かるけど。

主人公を殺そうとする手口なんかも、ああ、いつものヒッチコックだな、ダサいなと思うだけ。

いいところもありました。
モノクロ画面が美しい。
ラスト近くで飛行機が墜落して乗客が海に投げ出されるあたりは迫力満点。

俳優では、フォリオット役のジョージ・サンダースがよかった。主人公を食いかねない味があって。
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