ヒッチコックがアメリカにわたってから2作目となるこの作品。
前作「レベッカ」で、徹底的な心理サスペンスを展開したのとまるで正反対の活劇サスペンスです。
第2次世界大戦開戦直前、アメリカの新聞記者ジョニーは、
その型破りな性格を見込まれて、海外特派員としてヨーロッパに派遣される。
開戦の鍵となるオランダの政治家ヴァン・メアの独占取材をせるために。
が、そのヴァン・メアが和平会議の会場入りしようとしたところ、ジョンの目の前で射殺されてしまう。
騒然となる街。
犯人は雨の中逃走。
ジョニーは車で追跡。
郊外の風車小屋にたどり着くと、そこに殺されたはずのヴァン・メアがいた。
こういう感じで物語は始まります。
この作品はヒッチコック技法の集大成のようで、
そのテクニックを、カメラワークを惜しみなくみせてくれる。
冒頭のヴァン・メアの射殺場面からあっと言わせるが、
そのあとの犯人追跡のサスペンス。
例えば、目の前で犯人が射殺されたのに雨ということで、大勢の人が傘をさしており、犯人が見えなくなる。
そのあと市電に邪魔されたりしたあと、カーチェイスに至る場面など、
身を乗り出すほど面白い。
ロンドン市街を見渡せる展望台で、ジョニーが殺し屋に狙われるシーンの見事なカメラワーク。
ホテルからの脱出、電話、メモ。
ちゃんとギャグでオチまでつける心憎さ。
そして隠されている陰謀が明らかになり、意外な首謀者が・・・
ドイツの戦艦に自らの乗っている旅客機が砲撃され、
海に墜落したりしちゃいます。
ある方がこの作品に対するレビューで「この作品にはリアリティーがない」とか言ってる輩がいましたが、ヒッチコック作品にリアリティーを求めるのは野暮。
その語り口とカメラワークを楽しむんです。
そして、それが優れているから、特撮技術の未熟なこの時代にも、
これだけの臨場感と迫力とサスペンスが生まれるのです。
海に墜落した飛行機で漂流する場面など、
キャメロンの「タイタニック」と遜色ない迫力がありましたよ。
カーチェイスのシーンにしてもそう。
例えるなら、エンジンの型は古くてもドライバーの腕がいいから、
レースでも優勝してしまう感じかな。
時代が時代なだけに、
やや政治的メッセージも強く、
ラストシーンなどは国威高揚になっています。
120分とヒッチコック作品にしては長尺ですが、
時間は気にならないと思います。
オススメですよ!