アラサーちゃん

海外特派員のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

海外特派員(1940年製作の映画)
4.0
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〖海外特派員〗
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ヒッチコック好きとか触れ回っているくせに、これ観てなかった自分なぐりたい。50発くらいなぐりたい。
だってレンタルなかったんだもん。なんなんだよ、こんな名作置いてないって。いったいお前らなにやってんだよ?

世界大戦前夜の欧州を舞台とした、ヒッチコックお得意の逃亡スパイサスペンス。

世界大戦勃発の危機に瀕したヨーロッパに派遣された、米国人記者ジョーンズ。そこで戦争回避の鍵を握るオランダの元老ファン・メールに接触するも、大切な平和会議の直前に彼は射殺されてしまう。暗殺犯を追ったジョーンズは、暗殺が実はカモフラージュであり、ファン・メールは彼の知る機密情報を狙う組織に拉致されていることを知る。しかし、彼の言葉に誰も耳を貸さないどころか、ファンメールの生存を知る邪魔者として、ジョーンズは組織から生命を狙われることになる。

この作品はヒッチコックのハリウッド作品二作目。この年に【レベッカ】をつくっており、こちらでアカデミー賞を受賞していますが、この作品のハリウッド感が前作に増してものすごい。
【レベッカ】は精神にじわじわ追い詰めてくる閉鎖的でガスライティングな心理サスペンスでしたが、【海外特派員】は世界的な暗躍組織を敵とした大スケールな社会派サスペンスで、アクション的な見どころも多数。全体的に派手にハラハラさせてくれました。

サスペンスとしての見応えあるシークエンスがいくつも繰り返されるのだけど、どれも新鮮で斬新。見ていて飽きない。
とくに風車のクダリなんてひとつひとつポイントをあげていったらキリがないので割愛するけれど、それを引いても、活動的なヒロインとのロマンスとサスペンスフルなシーンの応酬。
クライマックスもただじゃ転ばないノリに乗ってるヒッチコック。こんなクダリもってくるのかァ!と思わず感嘆のため息を漏らしたくなるような完璧な流れでのパニック終盤戦。うますぎる。何もかも『戦争』に左右され悲劇に陥れられるというシニカル、ブラックユーモア。
キャラクターに愛情溢れる人情味を持たせるヒッチコックの懐の深さも、また粋ですよね。

ヒッチコック久々に観たけどやっぱりいいなぁ、好き。素晴らしいもん。サスペンスという分野で、観客を楽しませようというスタンスが伝わる。
ヒッチコックは当初主人公の役をゲイリー・クーパーに打診したが断られたらしい。しかし、完成後に作品を観たゲイリー・クーパーが出演しなかったことを後悔したっていう話。