みーちゃん

狼たちの午後のみーちゃんのレビュー・感想・評価

狼たちの午後(1975年製作の映画)
4.5
ドラマ"マインドハンター"で本作が流れ、すぐにアル・パチーノの"狼たちの午後"だと分かったけれど、あまり覚えていなかったので観た。

とても若い頃に観たからなのか、向こう見ずな銀行強盗の顛末みたいに思ってた。確かにそうなんだけど、たった一日の背景がこんなに複雑だったなんて。間接的な描写は勿論、直接的な描写すら見ていなかったのか。

オープニングのNYの街角と人々、黒人の守衛が解放された時の警察の反応、彼らの出会いからここに至るまでの経緯、家族、群衆など。全てに想いを馳せずにはいられない。

本作のことを調べるとストックホルム症候群が出てくるし、確かにそれもあるかもしれないが、ソニーのパートナーがレオンだと知り、人質は自分達のリスクの一つが解消し、暗黙の安堵感を得たんじゃないかな。それがミニスカートと捧げ銃に表れていると思う。

そして当時35歳のアル・パチーノの演技には改めて度肝を抜かれた。「アティカ!アティカ!」など、彼が街の風景の一部に見える引きのシーンから、建物内の寄りの映像まで(遺言を読み上げるシーンの絶妙さ!)、驚きの連続だった。って言うか、事件が起きる前、路上に停車した車の助手席にいる姿だけで、既に何かを物語っている。

それだけじゃない。後部座席に見えるのはジョン・カザールの特徴的なシルエット。彼が演じたサルの、危なげで儚い紙一重の人物像は、信じられない完成度だった。