Yurari

エクソシストのYurariのレビュー・感想・評価

エクソシスト(1973年製作の映画)
4.5
さすが語り継がれるだけの作品。
エクソシストといえば、のブリッジシーンの印象が強く、B級ホラーだろうという程度の前知識だったが、良い意味で裏切られた。
ただのホラーではなく、信仰の喪失、いや、神の不在・敗北がテーマだろう。


==以下、ネタバレ含みます==


映画の幕開けは、イラクでの遺跡発掘シーン。なかなかしっかり撮られており、この時点で、あら、B級じゃなさそう?と、期待が膨らんだ。
カトリック教会の神父、メリン神父は、考古学者でもあり、遺跡発掘作業に打ち込んでいた。体力仕事だが、神父の顔は顔面蒼白で今にも死にそう。実際、薬が手放せない状態。
イラクでは不穏なシーンが断続的に続き(特に突然やってきた馬車に乗っていた、老婆の顔がめちゃ怖かった)、何か起こりそうな予感が。

場面が変わり、ジョージタウン。女優の母と娘リーガン。撮影のために借家で生活している。ナニーと召使いがおり、生活には不自由がなさそう。仕事で忙しい母に対して娘はにこやかに接しており、一見問題はなさそうにみえる。しかし、リーガンはウィジャボード(こっくりさん的な心霊ボード)で遊ぶなど、友達がおらず孤独に過ごしている様子が窺える。

と、ここまでは母と娘のいずれかが主人公か?と思っていたが、この映画の真の主人公は、カトリック教会の神父であり精神科医でもあるカラス神父。宗教と医学は、本質的には人々を癒す、という点で共通しているが、癒しのアプローチが根本的に異なる。両方を学んだカラス神父だが、信仰心がなくなりつつあり、思考回路は医学寄り。きっかけとなったのは、病気の母。信仰では母を救えなかったのだ。カラス神父は、ボクシングをしたり走ったりと、自分の葛藤をスポーツにぶつけようともしている。

リーガンにとり憑いた悪魔と、メリン神父とカラス神父の対決シーンは圧巻だった。
ところで、本当に悪魔はいたのだろうか。母との時間を過ごせず寂しかったリーガンの心理的な要因で別人格になってしまったのでは?という推理もできるが、表情や動きなどからしてその可能性は低いだろう。また、メリンが冒頭で、悪魔らしき像と対峙していた事、悪魔(であろう)声を逆回しのテープで流したら、「メリン」と言っていたことからも、悪魔は存在すると言えると思う。

結局、チーム神父は敗北。メリンはショック死(それか過労死?)、悪魔祓いの最中に聴診器を手にリーガンの心拍を測っていた(!)、迷えるカラス神父は転落死。カラスに一瞬悪魔が乗り移ったが、カラスと共に悪魔が死んだとは思えない。きっとまた誰かにとり憑くのだろう。

ちなみにこの映画で最も怖かったのは、病院での検査シーン。リーガンは首に注射されて(めっちゃ血が出て、飛び出た血は下半身の方まで飛んで行った・・)、管がつながったまま頭部のレントゲンを撮影。音もすごいし、機材が微妙に古く汚れており不安になる。悪魔よりこっちが怖いわ。
そして、映画の本筋とは全く関係ないが、医学の進歩、ありがたし・・なんて思った。
そしてさらに思ったのだが、その点、信仰って全然進歩がない。祈りの言葉も、方法も、基本的には何千年も同じだ。その意味でも、信仰と医学って対極的なものなのかもしれない。

いやー、面白かった!
Yurari

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