あき

エクソシストのあきのレビュー・感想・評価

エクソシスト(1973年製作の映画)
4.0
NHK BSでやっていたので録画して久しぶりに視聴。
そこで改めて思うのが、日本と欧米の超常現象の違い。
日本の場合は基本的に”幽霊”であって”見えてしまうもの”であるのに対し、欧米はほぼ”悪魔”であって”取り憑かれるもの”であり、同じ恐怖心を煽るものであっても立ち位置が”内と外”で全然異なるのは興味深い。
その意味でも超常現象は結局人智を超えるものへの畏怖の念が形として表されたものが文化の違いによって各地で異なっていったことの結果なのだろうと思うけど、
中でも関心があるのは、表現方法は世界でそれぞれ異なっていったのに、”化けて出る”のも”悪魔が取り憑く”のも、どちらも主体は圧倒的に”女性”であるということだ。
なぜこの系は決まって女性なのか由来がわからず不思議で、検索してみても納得いくものが見当たらず、突っ込んで調べてみるだけの面白さがそこにはある。

ただ、
エクソシストの代名詞とも言える”スパイダーウォーク”が、あまりにも怖すぎる(キモすぎる?)という理由で地上波ではほぼカットされていて、市販のDVDにも同じ理由でカットされていて観ることができない。
伏せられると観たくなるのが人間の習性なので、唯一今それが観れる”ディレクターズカット版”をわざわざ買って観てみると、
それ以外にも通常版と違う点がいくつもあるのが興味深い。
たとえば、キッチンで電気が点滅するポルターガイスト現象のときにキッチンのフードに悪魔の顔が浮かび上がるのは通常版にはないし、今や定番とも言える手法をこの当時すでにやってることがとても斬新。
また、サブリミナル効果で悪魔の顔がはさみ込まれるのは、ディレクターズカット版では神父の母親が地下鉄から地上に出てきたシーンのときだけど、ほかの版では地下鉄に住み込むホームレスのときのもある。なお、TV版ではサブリミナル効果はカットされている。
ちなみにこのサブリミナルの悪魔の顔は、ラストシーンで悪魔が乗り移った時の神父の顔で、いわば伏線になっている。
そして悪魔が乗り移った神父が窓を打ち破って身投げして自殺する直前にその窓のカーテンにその神父の母親の顔が一瞬サブリミナルで挟み込まれるのも通常版にはなくディレクターズカット版でのみ確認でき、サブリミナルでの悪魔の顔と相まって、神父の原罪の根源が自身の母親との関係性にあることを暗示していて、それまでの様々な伏線がここにすべて集約されてわかりやすくなっているのに通常版ではカットされてるためエクソシストの本来の物語性を希薄にしてホラー的エンタメ性のみ強調されてしまっているのはもったいない。
いくつかのパターンが存在する映画はいくつもあるけど、エクソシストはその中でもその数が多いほうで、ホラーが苦手でなければディレクターズカット版がやはりいちばん面白い。
あき

あき