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エクソシストの海のレビュー・感想・評価

エクソシスト(1973年製作の映画)
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こんなに怖い映画がこの世にあるんだなとエクソシストを観るたび思うし、初めて観てから10年は経っているけど、あらためてここまで震え上がったのは今回が初めてだったかもしれない。8本続けて好きなホラー映画を観るという恐怖中毒者のようなことを久しぶりにした。わたしがこの作品に出会ったのは、人生で一番映画を観ていた中学生のときで、自分と同い年くらいの女の子が悪魔に取り憑かれて見るにたえない姿になっていくさまは当時確かに恐ろしいものとしてわたしの心に残ったけれど、そのときは悪魔に取り憑かれた女の子の映画よりも誰かに追われて殺されるとか悪いおばけに怖い目に遭わされる映画のほうがずっと怖かった。今自分が、この映画に感じる恐怖のその感触は、その頃とは全く違く(ずっと冷たくて執拗な恐怖だった)、一番印象に残った人物も、全く違った。最近はそういうことが増えてきて、これは誰の物語だという認識まで明確に変わってきた。いま、この映画の何がそんなに怖いのかと聞かれると、このシーンですというのがあるわけではなくて、暴力や無力さや悪魔それ自体がわたしを震え上がらせているわけでもない。ただ、窓が開け放された寒く暗い部屋で横たわった神父さまや、不安と悲観で満ちた部屋の外を間断なく行き交う車の騒音と鋭いヘッドライト、窓の内がわにあるべきだった問い掛けとその外にしかなかった返答のことを思うだけで、怖い、でいっぱいになる。その場でパニックになる類じゃなく、安楽への希望が欠けてやがて失われていくのを黙って見ているしかないその恐怖だ。きっと体の外じゃなく中へ作用する恐怖だ。夜の山道で、車に轢かれて死んでいる動物を見るときと、それは似ていると思う。
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