あしからず

アスファルトのあしからずのレビュー・感想・評価

アスファルト(1929年製作の映画)
4.5
すごい。川端康成も賛美したベティ・アマンのむせ返るような官能性に気を失いそう。女泥棒と警官の倒錯自体は通俗的なのに、アマンの誰とも既視感のない黒豹のような野生的な色香と美貌、更に巧みな編集とカットの繋ぎの妙で磨かれてこの完成度、映画への真摯さを感じる。宝石店でのフォーカスがかった執拗なクローズアップは「この美にひれ伏せ」と言わんばかり。これ状態のいいフィルムで大画面で観たら腰抜ける。
アスファルトを固めるタイトルの格好良さから『メトロポリス』のグスタフ・フレーリッヒ演じる生真面目な警官がふわふわのカーペットを踏むまで、状況描写と小道具の使い方が見事。画面左からにゅっと突き出た1本の腕と車を鏡合わせにした映像からカメラを引いて現れる人間信号機おもしろい。白から黒、黒から白へ、アマンのファッションと共に内面と外面が反転する所も明快で効果的。平和な家庭が一転してお父さんが制服を羽織るとこ痺れた。
アマンといい銀行強盗の手法といい、これ『黄金の七人』の下敷きなのかな。
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