宇尾地米人

ホワイト・バッファローの宇尾地米人のレビュー・感想・評価

ホワイト・バッファロー(1977年製作の映画)
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 ブロンソン演じるワイルド・ビル・ヒコックは本名ジェームズ・バトラー・ヒコックといって実在した凄腕ガンマンでした。彼がこの映画の主役のひとりです。インディアン討伐や野牛狩りの功績から西部の英雄とされていましたが、年をとったいま、白い野牛の悪夢にうなされて苦しんでいます。この白い野牛というのが、デカくて狂暴で怖い顔面して睨んできます。恐ろしい存在なんですね。もうひとり主役がいます。ウィル・サンプソン演じるインディアン部族の男は、この白い野牛が暴れ回って集落を滅茶苦茶にされたせいで、娘と仲間たちを喪ってしまいます。悲しみでメソメソしてしまい、部族長の座を追われます。あの野牛は絶対許さん、必ず討ち取ってやる、と娘の墓前に誓って、このひとは旅に出る。ブロンソン・ヒコックとジャック・ウォーデン爺さんも白い野牛を討つために、ライフルを手に雪降る山地へ赴きます。道中荒くれ連中やインディアンと撃ち合いになりますが、この白人たちと元部族長の男が偶然出会って、共闘してみせます。ほんの少し、戦地の友情が築けたかと思いましたが、白人とインディアンは仇敵の間柄。なかなか簡単には仲良くはなれないですね。ですがいまは白い野牛を追い詰めて討伐する共通の目的があるということで、「俺の獲物だ俺が殺す」「ここは殺した者勝ちだ」と言い合いながら、共にバッファロー狩りの旅をしていきます。このホワイト・バッファローと対決できるかどうか。そういうお話です。

 お察しのことと思いますが、ハーマン・メルヴィルやジョン・ヒューストンの『白鯨』や、ピーター・ベンチュリーやスピルバーグの『ジョーズ』の、山地を舞台にした映画版といったところでしょうか。原作は1975年に発売されて、作者が映画脚本も手掛けていますね。監督がイギリス人のJ・リー・トンプソン。『ナバロンの要塞』や『マッケンナの黄金』が有名ですね。映画ファンからはアクション派として知られていますが、サスペンスやコメディも作っていて、なかなか多彩なキャリアを積んでいました。この監督にとっても、ブロンソンにとっても、『ホワイト・バッファロー』は異色作に思えます。なんせ巨大動物を追って対決する話ですからね。西部劇映画のなかでも異彩を放っています。とはいえ、この作品にも、人種、友情、亀裂、決闘という西部劇らしい趣は顕在しています。

 やはりこのような映画こそ、キャメラの感覚が求められますね。白人の理屈、インディアンの理屈、白い野牛の獰猛な存在感。それをどう捉えるか。大事になってきます。ということで、撮影監督はポール・ローマン。なるほど名うてのキャメラマンです。ロバート・アルトマンの代表作『ジャックポット』『ナッシュビル』『ビッグ・アメリカン』の撮影を務めた人です。映画のみならず、テレビの活躍も多く、エミー賞も受賞しています。これほど確かなキャメラマンが、人の呼吸、雪山の風、野牛との対決場面をどう捉えたか。見せ場になっています。さらに特殊効果、特撮スタッフにロイ・L・ダウニーという人がおりますね。この人もなかなか凄いというか、『キラー・ビー』『巨大蟻の帝国』『毒蜘蛛タランチュラ・死霊の群れ』などと、もういかにもな作品の特撮に携わっているんですが、90年代にはハリウッド大作の視覚効果、特殊効果マンとして『ウォーターワールド』『ボルケーノ』『アルマゲドン』『ファイト・クラブ』などのスペクタクル場面の演出に加わっているんですね。さらに本作の特撮チームは後々『グレムリン2』『プレデター2』『ロケッティア』『リーサル・ウェポン』シリーズにあたっているので、そういう人たちがこのギロッと怖い巨大野牛を造っているんだなぁと思って観てみると、感慨がより深くなってきますね。
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