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スパイダーマン3のpikaのレビュー・感想・評価

スパイダーマン3(2007年製作の映画)
4.0
公開当時20代前半。高校生のときに1作目を見て夢中になり新作を心待ちにして劇場へ行ったあの日『こんなの見たくなかった』ってそれから1回テレビ放送かレンタルで見て以来見てなかった。なんでそんなに不快な気持ちになったのか今回見てなんとなくわかった。トビー・マグワイアのピーター・パーカーとほぼ同じ世代で作品と共に成長していったため自己中で自己顕示欲大爆発な調子づいた様を直視できなかったんだ。今見るとまさに当時の自分と重なる痛さ。
大いなる力を手に入れその責任を学ぶ1作目、責任と自己犠牲により自身の幸福と人生を見直す2作目、そして3作目は実力の行使と目的、充実した生活のバランスが取れ安定した日々が故に生じる一歩先の欲望と人間関係に苦悩する話。
こうして見ると非常に良くできた映画だなと思わされる。アメコミのヒーロー映画でありながら最後までブレずに等身大の隣人を描ききっている。
社会人や学生としての将来の展望、結婚を踏まえた恋愛ドラマなどエピソードがいちいちリアル。スーバーパワーのあるなしに関係なく普遍的な若者の成長譚として見れる素晴らしいシリーズだと思う。
ヒロインのMJも友人のハリーも丁寧に描かれている。共感できない人もいるだろうけどあの葛藤と困惑は生々しいと私は感じた。映画の中のキャラクターだけに留まらず等身大の隣人として一貫して成立させている。

アクション描写はめちゃくちゃ凝ってて並のアメコミ映画よりもかなり秀でている。シリーズそれぞれアクションも似通わないように個性を出していて凄い。前2作はアクションとドラマが完全に融合してたんだけど3はチグハグになってる。つめこみすぎて余白なく処理してるからシーンで描いた感情やドラマの効果がいまいち効いていない。
ブラックスパイダーマン化したピーターの描写が全部最高。カッコつけて色気出してるのにキモがられていて可愛すぎる。トビー・マグワイアの真骨頂とも言える演技。悪〜い表情が映えまくる。

サンドマン好きなんだけどサンドマンの下り全部抜かしても成立できるように思うし消化不良な着地がもったいない。ヴェノムとハリーのドラマに焦点を絞ってまとめた方が良かったんじゃないかと思わされる。サンドマンだけ結局何も解決していない。ベン叔父さんのくだりもヴェノムの顛末を正当化するため無理やりこじつけた感がある。

二時間半弱の中でここまであれこれと盛り込んでいるのにピーターとMJの成長という軸をブレさせずアクションエンタメ活劇としてまとめている点はさすが。3作で見ると完成度としては物足りなさは残るがシリーズ物としてはこれ以上ないと思う。
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