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スカーフェイスのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
3.8

闇世界の中で、止まらない欲望と自我に溺れながら生き渡る男“トニー・モンタナ”の栄光と哀しき末路を描いたクライムヒューマンドラマの傑作。

アル・パチーノと言えば、【ゴッド・ファーザー】【カリートの道】そして本作の三大マフィアものが代表的。
中でも根強いファンが絶えないのが本作なのかな?
※個人的には【カリートの道】が最も好きだが。


己のガッツと勢いと神がかり的な強運によって傍若無人に成り上がった男の、金と女とヤクにまみれた末路を、アル・パチーノがどハマり役で見事に演じているこの作品は、もはやアル・パチーノの一人舞台。

仁義を貫き全うした自分への裏切りや代償によるクズなアタマ共への怒りは、やがてトニーを孤独へと導き、破滅の一途を辿る滑落ストーリーのみしか無いのだと自ずと見えて来た頃には、身も心も既にズタボロ状態で全ての者が敵にしか見えなくなると共に、愛する者への想いすら切なく散り果てていく、、、
そんな男の死生観という意味では【カリートの道】と大筋は似ている。


闇社会で生きる者の栄枯盛衰を、170分の長尺の中で富や栄光といった幾つもの“欲望”による人間の脆さと強さを同時にバランスよく描いた本作から学ぶ事は、理不尽な事への憤りや怒りの感情を、如何にして愛や情熱や仕事へのパワーへと置き換えてエネルギーに換えていけるかという社会生活に於ける哲学のようなものだろうか。

この作品が好きな人が何度も何度も観返しているのも、そんな魅力と教えがあるからなのだろうな。
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