映画を見る猫

スカーフェイスの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
3.7
80年代の香りがプンプンするギャング映画の金字塔。
しかし時代を感じてしまうということは古さを纏うことと同義であって、この点デ・パルマという監督のセンスの高さというのは、あくまで当時の流行の最先端にあったという意味での評価に落ち着くのだから、やはりデ・パルマという監督を、一流の映画監督などと評すのは、語弊がすぎるのである。
崇高さ、重厚さ、何十年経っても古びない演出、眼を見張るような美しい画、度肝を抜く展開、そんなものはどこにもない。
でも、見れる。
若き日のアル・パチーノが演じるあまりに無様な男の生き様を。
かつての新規さをもはやノスタルジックとさえ感じながら、お決まりの目配せとサスペンスの中に、思わず苦笑が溢れるようなB級映画の系譜中に。
猿山のてっぺんを目指した男が夢見たものは、あまりにも馬鹿馬鹿しくて愚かしくて、無知故に手に入れた権力は呆気なくその手を離れて、1人の男を破滅に誘う。
この映画は、古典でもなければ、もはや斬新でも新しくもない。
でもある時代を語っている。
映画好きなら誰もが1度は目にする時代、耳にする時代、鎮火したかつての熱狂を確かに象徴しながら、今もなお燻っている。
それ故に無下にすることも難しい。
デ・パルマは自分にとってそんな監督の1人である。