Omizu

アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)のOmizuのレビュー・感想・評価

3.9
【第22回カンヌ映画祭 国際映画批評家連盟賞】
ロシア史上最高のイコン画家とも称されるアンドレイ・ルブリョフを題材にした作品。1966年に完成していたものの、国の検閲にひっかかりソ連国内での公開は1971年になってしまった。カンヌ映画祭へは無断で出品され、見事受賞を果たした。

唯一タルコフスキーで見逃していた作品。実在の人物の伝記映画というおよそタルコフスキーらしくない物語ながら、そのタッチは正真正銘タルコフスキー。観念的なセリフと引きの画面、半分近くを幻想シーンが占める。

その後の諸作に繋がっていくようなモチーフも数々登場する。犬、言葉をきかない少女、燃え上がる火…

アンドレイの裾が燃えかかるシーンは『燃ゆる女の肖像』を思い出した。もしかしてセリーヌ・シアマ、これ好きなのかな?

セリフはそこそこあるが、かなりの割合を本や誰かの言葉の引用が占める。特に主人公たるアンドレイのセリフは聖書的で、中盤からは「沈黙の行」によって言葉を発しなくなってしまう。

美しい撮影も相変わらずだが、その後にはあまりない残酷なシーンも多い。タタール人による襲撃シーンはなかなかショッキングな演出をしている。それでも美しさが失われないのがタルコフスキーだけど。

撮影と言えば最後、ずっとモノクロだったのにいきなりカラーになるのが驚いたし上手い。アンドレイの業績を伝えるとともに、我々と地続きであることを言葉なくして表現している。

タルコフスキーの美学に溢れた美しい作品で、その後に繋がる要素をみつけるのが面白かった。
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