ラマさん

アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)のラマさんのレビュー・感想・評価

4.1
凄い。ロシア版大河ドラマみたいな感じだけれども日本ととはまた違った感じでいい。1400年代の時代の雰囲気を解像度高く再現していてその民俗と芸術とを想起させることに成功している。最後に出てきたルブリョフの絵の光っているような特徴的な青をラストにこれ持ってくるのエグい。前編モノクロだからイコンの色彩が映える。あまりに専門的な宗教の話よりもその周辺の人々の動きや文芸に着目してるので前知識無くても楽しめるのもいい。鐘の完成は息を呑むものだった。
ルブリョフのイコン描きとしてが「これから始まった」というのを知ったので妙にしっくりきた。そういえば二章は復活がテーマだった。鐘の少年はまだ歳少なくしてあれだけのものを創り上げた。それでも彼は自分の至らなさに泣いたのである。これはルブリョフの言うように作ったものが粗末だから泣いているのではない。確かに立派な鐘なのだ。ただ彼は鐘に自分の思いを乗せることが出来なかった。それを以て神の威信を示したり美を探究したと呼ぶにはまだ若すぎたのだ。ルブリョフとの生活が始まったのかは定かではないが、「これから始まる」というのはルブリョフと少年のどちらにも向けている。少年はこれから時間をかけて自分のために鐘を作れるようになるのだろう。ルブリョフはといえば暫く筆を折って沈黙を貫いていたがキリルに会い、その賜った力を使えと言われる。信心深い彼はそれだけの罪を自分に負いながら生きてきた。本当は髪は罪を課していない、自分で自分に枷を付けているだけなのに。そんな折にただ親から賜った鐘を作る能力があるだけの、作る意味も作らない意味もない少年に会う。少年は彼に才能があるだけの理由でも筆を取っていいのだと伝えたのだと思う。作る意味がないから作らなかったルブリョフはそんな少年とともに生活することでイコンを再び描き、「三位一体」を完成させる。個人的には沈黙の禁は一緒にいた白痴の女に負担をかけまいと二人揃って禁をかけたことにしていると思っているけどどうなんだろう。
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