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アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)のmfgのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます



〈第一部〉

“旅芸人 1400年”

・モスクワへ向かう(白樺の木との別れ)イコン描き
・ハゲ頭に帽子代わりのカップ
・雨
・旅芸人の芸に盛り上がっていた小屋の人々は、雨宿りに訪れたイコン描き一行に一気にしらけ…
・イコン描き一行への冷たい視線、無視(“旅芸人は悪魔の使い”との発言)
・(…しかし旅芸人の胸元には十字架があり、信仰者でもあるのでは…?)
・絶望に満ちた瞳で虚空を見つめる人々…
・雨の中 醜い争いを繰り広げる男たち(カミさん寝取り寝取られ問題にて…)…
・何も分からずなんかもぐもぐしてる純粋無垢な男の子
・連行されて行く旅芸人(抵抗するも白樺の木にぶつけられ…楽器は破壊され…)
・雨が上がれば 絶望感に満ちた人々を残してさっさと去ってしまうイコン描き一行
(“神のお恵みを”との言葉に全く誠意が感じられない…)
・そしてまた雨…


“フェオファン・グレク 1405年”

・必死に無実を主張するも処刑台に架けられる者/冤罪の可能性を完全否定できぬままに処そうとする処刑者(“(処刑者の無実の主張に対し)そうかもしれない”)/野次馬多数
・(/←それに対し、全く目にも止まらぬ様子のイコン描き)

・絵描き×イコン描き
(絵描き:)
(イコン描き:)

・絵描きからの熱烈な助手依頼を頑なに断るイコン描き
・…だったが死を目前にした絵描きからの執念深い依頼により、条件付きで助手を引き受けることに…
(条件:)

・間違った信仰の元に生きる哀しい姿…?
(目の前にいる苦しめる人々を救おうとしない愛の心の無さ/いくら知識が豊富で頭が良くとも、言葉だけ感が否めないような…/神を忌神的な捉え方の強さに問題があるような…(→真の神は愛の神であることを知るべき)/未来に希望を持てず絶望ばかりを語るような…(→真の神は人類を希望に満ちた未来へ導いてくださるものであり、それを信じ付き従うのが真の正しい信仰者の姿では…?)/etc…)

・信仰に生きるものに訪れる信仰の試し(許す愛や忍耐の心(自信の元を去っていく者の前途に幸あることを心から祈ることができるか?祝福できるか?それによって被る自身の不幸に耐え忍ぶことができるか?)etc…

・信仰心と経済等のこの世的利害の葛藤


“アンドレイの苦悩 1406年”

・“嘘つき病”の弟子
・絵描き×イコン描き一行の旅
・討論
・新約聖書について…


“祭日 1408年”

・“何か聞こえないか”のその先に…
・情欲への試み…?(足元についた火は神からの警告…?)
・→ 野蛮な裸族との出会い、皮肉な拘束
・裸族女性との出会い
・真実の愛とは…?
・裸族女性による解放→イコン描きの逃亡を怪しく見つめる瞳
・かつて雨宿りをした小屋に辿り着く因縁…?変わり果てた(さらにボロくなった)有様に…
・“人間は何にでも慣れる”
・“老人は何も考えはしない 考えずに生きられるんだろうな それでいいのかも 毎日ただボーッと漂っていく”(≒川の流れに流されて行く木舟)
・逃亡する男女(←“神を信じない異教徒だから”/(他を排する心⇔“なぜあんな乱暴するの”と問う純粋な少年の心)/(神を信じないのは愚かなことだけど、人々が憎み合うことも神は望んではおられないことなのでは…?)/男は捕まり、女は必死に泳いで逃げ…/(木舟の側近くを通る女から目を逸らし…(←やましい心の現れでは…?)))


“最後の審判 1408年”

・心頭滅却火もまた涼しの精神で作業
・主教様の怒り
(曰く…:2か月も経ってまだ何もせず 仕事もしないで金をせびり取ったとして…/“誰も容赦しないぞ”とか…“何様だ”とか…(引き受けた側にも多分に問題ありだけど…)主教様ならもっと寛容に穏やかにしてほしい…/(→“それがどうした”との開き直った態度もまた問題ありだし…)/伝令役の舞台俳優ばりの熱量/秋までの完成を迫る/大公様に訴える使者も…/“三人寄れば何とやら”)
・事が動き出してしまった後になって今更躊躇うあたり、芸術家特有の苦悩的な…?
・(←“できないんだ”とか…“嫌なんだ 分かってくれ”とか…理由にならない理由)
・「最後の審判」を描くにあたって…
・絶好の天気の時に、“釜ゆでにされる罪人の姿”とか“悪魔の下絵”とかの話は確かに嫌…(…でも“気分の悪くなるような絵は描けない”は先に言えよ感…無責任で不誠実な態度もまた罪だし、“俺は不誠実な人間さ”との開き直りも許されるものではないのでは…?)
・見切りをつけ 酷い態度で去って行く嘘つき弟子
・現場の人々の冷ややかな目、不信感 猜疑心 苛立ち etc…に満ちた目

・“天使の声で語っても 愛がなければただの音でしかない”/“予言の力を持ち 全ての謎を解く知恵を備え 強い信仰を持っていても愛が欠けていたら無価値だ”/“全ての財産を捨て 肉体を犠牲にしても愛が欠けていたら何の意味もない”/“愛は忍耐と寛容である”/“愛は嫉妬させない 誇らず おとしめさせず 怒りを鎮め 悪を消す 嘘を喜ばず真実を喜ぶ 全てを譲り 全てを信じる”/“愛は無限だ”

・白いふわふわ
・(お嬢様との温かい交流の時に見せる笑顔こそが真実に見えるけど…)
・“軽やか”
・芸術に対する価値観
(誰にも真似できないことに対して価値を感じ、描き直しは断るプライドを持つ者/大公様のご名声第一として芸術を介そうとする心のない者/寛容で 懐のデカい弟君(いい石を用意し、“思う存分腕をふるってくれ 全てを任せる 最良のものを作れ”))

・弟君の元へ向かう一行への兵隊による酷い制裁
(大公様は弟君と不仲とのことで 弟君の話題に死人みたいな顔面蒼白/芸術を介さないタイプ…?(石をケチったり…)//ムチ/森の中を蠢く一行/生き残った少年/溢れだすミルク?)

・「最後の審判」が描かれるはずだった壁に 現代アート的なペンキの撒き散らし…
・聖書の朗読(女の来訪にも 女の嘆きの涙にも何の感情の動きも見せずに朗読を続けることを命じ…)
・また一人、作業現場から雨の中去っていく…(→“ほっておけ 懺悔しに行ったんだ”)
・藁をかき集めてケロリとした顔で去っていく女

(神の御心とは…?:)

“あなた方が私の言葉を覚えていて教えを守っていることをうれしく思う”

“覚えておけ”
“男はキリストに従い 女は夫に従い キリストは神に従う”

“かぶり物をして祈りの場に現れる男どもめ 恥を知れ”
“かぶり物をせずに祈りの場に現れる女どもめ 恥を知れ”

“男は神の形見であり 女は夫の誉れである”
“女から男ができたのではない 男のために女が存在するのだ”

(女のかぶり物は従順の印)

“妻は夫に従え 全て神の思し召しである”
“全てがあるがままに”
“男の長い髪は誇れないが 女の長い髪は誇れる”





〈第二部〉

“襲来 1408年”

・タタール人襲来(vs.公爵(=弟君))
・(←両者の騎士道精神 武士道精神(戦闘における礼儀/相互理解の姿勢/心根の真面目さ 誠実さ/etc… は立派(…かと思ったけど…))

・弟君の心の闇…?(青銅の扉を破り教会へ侵入するタタール人、その様子を見て見ぬ振り…?/(→教会内に集った人々も…その周辺も…阿鼻叫喚地獄と化し…)/教会での聖なる式における大公からの心汚い行い(熱いキス、その下では足を踏み躙られ…)/逃げ惑い 苦しむ民を高みから見下ろし…)

・(⇔いかなる酷い目に遭おうとも祖国への誇りと神への信仰を失わない立派な志を持つ者も…)

・2羽の白い鳥/去って行った者の一人も矢に打たれ死し…/焦土と化した教会/猫

・“何を言ったかなど覚えとらん 人間なんてそんなものだ”…その通り だからこそ正語の反省が必要

・→“同じ信仰を持っていてもか?大地も人も一つじゃなかったのか”

・他者の嘲笑に負けちゃダメ!…だけど 仲間同士で殺し合うことは本当に恥ずかしいこと

・辛いけど失ったものを数えるより残されたもの与えられているもの(生き残った娘の存在…死者の髪を編み編み中)に感謝することも大事

・絵を捨てる決心をする者
(必要ないから…(本当の理由は人を殺したから(娘を助けるためのロシア人殺害だったが…)))
⇔何度絵を焼かれても絵を捨てなかった大先輩

大先輩からのお言葉
・“悪は人間の形でこの世に現れる だから悪を倒すためなら人殺しもあるさ 神は許して下さるよ”
・“だが殺した者は自分を罰しながら生きるのだ”
・(聖書より…(※うろ覚え))“善をなすことを覚えよ 真実を探せ”“追われる者を助け 孤児を守れ”“主は言われた 私と共に考えよう”“いかなる罪を犯そうとも私が雪のように清めよう”
→“お前の罪くらい許される”

・→“許しを乞うために無言の行に入る これから一切口をきかない”と自身に苦行を科そうとし、助言を求めるも“私には助言する資格がない”“君に分からんことは私にも分からん”との大先輩

・→“母なるロシアは耐えている 俺も耐えねば…”
(…忍辱の心は大事だけど…自縄自縛的な感じも…)

・“いつまで苦しむんだ”と大先輩に問い(自分で自分を苦しめているように見えるけど…)…→“分からん 永遠にだろう”とさらっと応えて、惨状と化した教会内でも絵を礼賛する大先輩

・教会の中に雪(=“恐ろしいこと”)/教会の死屍累々の上に降る雪/蹄を鳴らして現れる一頭の馬、嘶き


“沈黙 1412年”
(Chapter15〜)

・現状:腐ったリンゴばかり/経験したことのないようなひどい飢饉/村はどこも空っぽ/見るも無惨な村々(誰もいない村、3年飢餓が続いて皆ネズミを食った村も…)

・罪の償いとして沈黙の行にて一言も口をきかず…(連れてきた娘も同じく口をきかず…)

・本能に従順すぎる娘
(知的障害ぽいとこあるのかも…?/タタール兵の犬用の汚い肉(馬肉)を盗もうとしたり…貪るように食ったり…/→タタール人に見染められたり…?)

・許しを乞う者
(神を侮辱したとのことで…/“俗界に行けば罪を犯してしまいます これ以上罪を犯したくありません”/罪を償うために僧房で聖書を15回書き写すことを命じられ…)

・無言ながらに必死に娘を連れ戻そうとするも…/→旧知の人に出会うも、知らぬふりを決め込み あくまでも自身を辛苦の極みに追い込もうとしている…?/淡々と…淡々と…無言の下に焼けた石を運ぶだけ…


“鐘 1423年”

・鐘職人の青年
…無知で愚かでありながら、信念と情熱は素晴らしい
(※…けどやっぱり経験不足 知識不足は否めないし、周囲に対する謙虚な姿勢 常に学ぶ姿勢 感謝の心 etc…は忘れてはならないし、傲慢になったり それによって他者を罰したりするなんてあってはならない)
→ どんどん傲慢不遜に…
(ここ一番の時だけの“神よ お守り下さい”は真の信仰とは言えないと思う
…日々に神の御心に適った正しい信仰生活を送ってこそ神はその人間を守り賜うのでは…?)

・大公の後釜道化師(本当は手仕事の方がよかった/陥れられ…10年もブタ箱に入り…舌も半分切られ…/密告者への恨みつらみ…(→ “殴るなら俺を殴れ”と跪く清く美しい聖職者の姿は戦意を喪失させる)/(酒を呑みながらズボンずり落ちちゃって大衆を盛り上げ笑わせられるあたり、手仕事より道化師の方が向いてるかも…?笑))
…適材適所の登用の難しさ
(本人の望んでいない方向に意外と才能が眠っていたりもするし…)

・嫉妬の心とか自身が犯した罪を正直に告白/(※しかし反省の心がイマイチ足りないような…?)/歳を経て人生を達観できるようになったとしても それが自分をも他人をも幸福にしないのであれば何の意味もない

“お前がうらやましくて嫉妬して心の底から憎んだ”
“そしてあの修道院から出て神に見捨てられた”

“(聖書写経中にて)院長の仕打ちだよ あんな骨折り仕事…終わる前に死んじまう”
“ああいう仕事はお前にこそふさわしい お前は俺より罪深いんだ”

“俺はダメな人間で必要とされてない”

“絵を描き続けろ 神から与えられた才能を無駄にするな”

旅芸人を陥れたことも告白し…

“呪ってもいいから口をきいてくれ”

…それでも口をきかず ただ木の葉を燃やすだけ…





・大公様ご来訪(外国の大使を引き連れて…→ピンチ…鐘が鳴らないと大変なことに…!)

・鐘は見事に鳴り響くが…

他人を許すことで自分も許される、自分を許すことで他人を許すことができる


壁画ラスト










人間罪の子観が強すぎるような…
(人間は本来神の子仏の子であり、罰せられるべき自分ではなく 神から愛されるような光り輝く自己を見出し磨き上げていくべきでありそれこそが人生の意味なのでは…?/)





信仰の試し
…自身に不幸が臨んだり…この世的利益が得られなかったり…悪魔からの甘い囁きや巧みに猜疑心を高まらせるような言葉があったり…etc…すると 人間はどうしても信仰や神に対する疑い心が出てしまうものだけど、それを乗り越えてこそ 真に神を愛し神から愛される絶対幸福の中に生きることができる





せっかく神から与えられた才能を 自身の勝手な自己処罰願望により無駄にしてしまう勿体無さ…自身も周りの人々をも罪意識に陥れ 不幸しか招かないマイナス思考の極み…





現在只今生きているということ 神から生かされているということがすなわち神から許されているということなのでは…?
→神から愛され生かされ許されているその御慈悲 恩寵に報いるためにも、自身も神の御心に適った人を愛し人を生かし人を許す生き方をしなければならない
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