TaiRa

砂の惑星のTaiRaのレビュー・感想・評価

砂の惑星(1984年製作の映画)
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代表的な「失敗作」とされてるけど、ディノ・デ・ラウレンティスのSF映画ってどれもこの程度だろ。

ほとんど実績ないけど才能あるっぽいからデヴィッド・リンチにSF大作を撮らせちゃおう、って試みは別に悪くないし、作品観ても変な映画としての魅力はある。問題はこれが『砂の惑星』の映画化である事。その点においては最悪の映画化と言われても仕方ない。フランク・ハーバートが『デューン』シリーズで成し遂げた革新の大きなポイントは、一つの世界を生態系レベルから構築して描き出す事だったと思うが、この映画のラストってその全否定をやっちゃってる。あの惑星に雨が降ったら物語の鍵となる生態系から何から全部台無しなので。その大き過ぎる過ちを除けば、リンチ的なフリークスショーらしさが存分に盛り込まれた、およそ『砂の惑星』とは関係のない要素がてんこ盛りな怪作で面白い。意味不明な声ビーム銃とかギルド・ナビゲーターの造形とか、ハルコンネン男爵の不必要なキモさとか、独自のオモシロさは豊富。リンチ独特のもったりした時間の使い方も顕著で、ただの娯楽作ではない雰囲気。もちろんみんなが求めていたのは良質な娯楽作の方だが。もったいないのはプロデューサー権限で明らかに短くまとめられたら作劇。急にダイジェストみたいな展開になったり、思いっ切り何かを飛ばした形跡が作品のあちこちに見て取れる。割り切って再構成していたのなら気にはならないが、中途半端に欠片が残っていたりして「ホントは色々撮ったんだよ!」という言い訳が画面から滲み出ている。ホドロフスキーは『砂の惑星』を映画化するなら10時間必要と言い、テレビドラマ版は4時間半、ヴィルヌーヴも二部作で5時間くらいはかけてる。そもそも2時間でまとめようとした製作側のミスが明白。リンチがとやかく言われるのも可愛そうな話。
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