カラン

アントニー・ガウディーのカランのレビュー・感想・評価

アントニー・ガウディー(1984年製作の映画)
4.0
アントニ・ガウディ(1852〜1926)は、スペインの建築家で、サグラダ・ファミリアの御方である。その教会は1882年に着工し、2026年の完成予定はどうも怪しいらしい。


☆しばし映画から離れて

このドキュメンタリーの監督の勅使河原宏は、安部公房と組んで傑作と称賛された映画を撮った後、70年代初頭に事故を起こし、70年代末に父が亡くなる。父はいけばな草月流の開祖である勅使河原蒼風。蒼風の後、二代目となっていった妹の霞も亡くなると、草月流三代目を自身が継ぐことになった。しばし映画から離れていた宏が映画に復帰したのが、本作『アントニー・ガウディー』であった。


☆反復と再出発

勅使河蒼風はガウディに魅せられ、その影響の大である、オブジェを製作していたようだ。宏は父の創った草月流三代目となり、父がガウディに何を見出したのか、それを辿ろうとしたのかもしれない。そしてこの『アントニー・ガウディー』の後、勅使河原宏は『利休』と『豪姫』という映画を撮り始める。

そういう、映画といけばなの、自分のやってきた映画と父の創ったものとの、蝶番のような役割を担っているのが、本作なのかもしれない。


☆ガウディを見る

壮麗に見えるように、ローアングルで見上げるロングショットを多用することもできたかもしれないが、むしろ、テクスチャーの細部とある領域のカラーリングに集中して、ファサードであれ、アーチであれ、柱であれ、手すりであれ、全てが湾曲しているガウディの建築を舐めるように、カメラは表面を捉える。




一緒に観ていた嫁はガウディ好きだと自称しているが、コメンタリーが欲しかったと。コメントはスペインのおじさんたちが合計で5分くらいだろうか、終盤に出てくる。私はこれでいいと思う。たぶんガウディ好きも、新しい発見をするのではないか、勅使河原宏の眼差しを追体験することで。勅使河原宏や草月流のいけばなにも触れていたりする上級者は、さらに楽しいかもね〜。


Blu-rayで視聴。画質は80年代の作品としては普通かな。音楽はいつもの武満徹で、建築に吹く風のような音を出している。
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