半兵衛

突然の恐怖の半兵衛のレビュー・感想・評価

突然の恐怖(1952年製作の映画)
3.6
何なんだろう、この傑作とも駄目な作品ともどっちにもとれそうな変な作風は。

若さを失いつつある売れっ子の女性脚本家が仕事で知り合った年下の俳優と知り合い結婚するも、実は…という前半はかつての二時間ドラマみたいな安っぽい感じがぬぐえなくて単調に。あと脚本家が家に置いてある小道具がいかにもこの後の伏線にするために用意しているとしか思えないのでちょっとげんなり。

それでもアカデミー賞で俳優賞にノミネートされたジョーン・クロフォードとジャック・パランスによる熱演がドラマの甘さを帳消しにして見ごたえを与える。それに加えてパランスの元彼女役のグロリア・グレアムの溌剌とした悪女っぷりも◎。

テレビドラマのパターンなら刑事が救いの手を差し伸べて、後半大団円にという流れになる話なのだけれど、そうはならず単独でバイオレンスな復讐を決意するのがクロフォードのキャラとあっている。そしていざ犯行に及ぼうとするも素人ゆえ様々なハプニングに遭遇して思うようにいかず家のなかに隠れる羽目にという後半の展開が、夜の闇や凶暴なジャック・パランスの目付きとボクシング仕込みの体格、見つかりそうで見つからないやりとりなどとてつもない緊迫感をもたらして滅茶苦茶面白い。ジャック・パランスが気に入ってるゼンマイ仕掛けの動くおもちゃがクローゼットに隠れるクロフォードの前に近づいてくる場面の怖さと言ったら!

予想外のところにたどり着くシニカルなラストも味わいがあるけれど、前半丁寧に紹介されていた舞台となる豪邸の仕組みが全く生かされていないのが凄いというかヤバい。
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