映画は遠い過去のはなし

裸の島の映画は遠い過去のはなしのレビュー・感想・評価

裸の島(1960年製作の映画)
3.3
◎「裸の島」と聞いて良からぬことを想像して観てしまったけど、健気に生きる日本人家族、最後まで観る者にとってもとても忍耐のいる作品だった。

◎すっぴん美人な乙羽信子の魂の演技を堪能

◎音楽、人々の声や笑い、泣き声、歌、自然の音は聞こえるのに、台詞は全く存在しない。故に人間の感情の機微がよりストレートに伝わってくる。

◎水の出ない島、貴重な水をせっせと運ぶ。ひたすら水を運ぶ。過酷な労働に男女は関係ない。。失敗して水をこぼせば、夫の平手打ちが待っている。1日が終わり、また朝がやってくる。収穫が終わり、また一年が始まる。
長男の死、象徴的に打ち上げられる花火。いよいよ妻の抑圧された感情が爆発する。黙って見守る夫。そして何事もなかったかのように畑仕事を再開する。
この家族にとってはこの島で生活することが生きること。生きることとはこの島で生活すること。
高度経済成長真っ只中、人々はより便利な生活を求める時代に、自給自足という敢えてこの時代に逆行する生活様式。
しかし便利になればなるほど人間の心は飢え渇いていく。「裸の島」に注がれる水とはまさしく私たち現代人の飢え乾いた心を潤す水。