すごかった……すっかり圧倒されました……。
人類が繁殖能力を失い、絶滅が確定してしまった世界を描いたSFアクション映画。
原作はディストピア小説らしいんですけど、本作に限れば「トピア」要素はほとんどなし。
言うなれば「プレ・アポカリプス(終末直前)」とでもいうべきお話です。
このSFらしい世界の描き方というか、街とか建物の美術が本当に良い……。
未来だけあってところどころ未来っぽいガジェットはあるんですけど、それが全然目立ってないどころか、総合的にはむしろ後退しているような感覚。
清潔感が失われて雑多になっている様子の、その表現が本当に繊細かつ絶妙で、見ているだけで浸れる心地よさがある。
生活感というか、「そこで人が生きていること」の生々しさ。大好き。
それと、長回しのシーンの迫力も好き。
特に最後の戦闘、銃撃戦の中を駆けていくところはもう最高でした。
ただ、どうしてもストレートに「面白い」「楽しかった」といった感想にはなりづらい面があるのもまた事実。
いわゆる「わかりやすいエンタメ」という趣の作品ではないため、結構体力を削られます。
全編にわたってほぼ逃亡劇、そのうえ全体的にトーンが重苦しく、しかも好ましい人物たちが次々死んでいく……というこのシビアさ。
ストレスのかけ方がなかなか容赦なくて、でもそこが魅力でもあるのが難しいところ。
手放しにおすすめできる感じではない、というのはどうしてもあるのですけれど、そこはそれ。
とても印象深く、かつ好きな感じの作品でした。
こうして見終えた後に振り返っているときの方が好印象になるタイプの映画かも。