割烹

トゥモロー・ワールドの割烹のレビュー・感想・評価

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)
4.1
何らかの理由により妊娠出産ができなくなったディストピアを舞台とする近未来SF。
クライヴ・オーウェン演じる役人が、なぜか妊娠した反政府組織の黒人女性を庇いながら、警察やテロリストの追跡をかわし、謎のヒューマンプロジェクトという組織へと連れて行こうとする話。
まず目を奪われるのが、退廃的な世界の描写。世界中で人類存続の希望が失われつつある中、舞台はイギリスだが、テロが蔓延、不法移民と強圧的な軍隊とのせめぎ合いが続き、荒廃した街、疲弊した人々、希望を失った世界がどうなってしまうのかを詳細なタッチでよく描いている。そのような世界において、軍隊に手厚く守られた上流階級の生活や、芸術作品を残そうとする文化大臣の姿も興味深い。
次第にきな臭い反政府活動に巻き込まれていくあたりのストーリー運びも見事だが、次に素晴らしいのが、移民収容所での軍隊やテロリストとの戦闘シーン。
戦争映画顔負けの迫力で息をもつかせぬ展開が続き、激しく撃ち合っていた軍隊とテロリストが突如赤ん坊の鳴き声に静まり返り、道を開けてしまうところは映画史に残る名シーンだろう。
映画中に何ヶ所かある長回しシーンは、CGを技術を活用してはいるらしいが、とんでもない緊張感を映像に与えている。
主人公がいくら小さい子どもを亡くしていたとはいえ、少々この親子に肩入れしすぎなのと、ヒューマンプロジェクトなる団体のトゥモローなる船に乗るとどこに行けるのかといったことについて前半下手に説明してしまったばかりに後半で明らかにならないのは不十分で、その後の主人公たちの行動の動機づけが弱くなってしまった感はある。
だがしかし観るべき映画であることは間違いない。
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