アーリー

静かなる決闘のアーリーのレビュー・感想・評価

静かなる決闘(1949年製作の映画)
3.5
2023.10.27

前作から続けて三船黒澤志村のトリオ。
手術中に患者の梅毒に感染してしまった医師とその周りを描いたヒューマンドラマ。

とにかく三船演じる藤崎先生が聖人すぎる。「酔いどれ天使」でのギラついた松永とは全然違う。落ち着いていて自分を厳しく律することが出来る人。真面目すぎるとも言える。親父役の志村喬との会話も丁寧で、尊敬する父親へのリスペクトを感じる。こっちの方が医者感あるよなぁ。「酔いどれ天使」の志村喬の感じの方が好きやけど。

梅毒に罹る=性交渉をしたと思うのは至極当然のこと。けど藤崎の感染の仕方は何よりも潔癖で崇高なもの。身体は純粋なのに体内は純粋ではない。破廉恥な男のせいで自分は許可も得ず汚されてしまった。彼の気持ちが爆発するシーンの三船の演技が印象的。あと峯岸が言いたいことをズバッと言ってくれるからスカッとする。最初は物語を掻き乱すやさぐれ女やったのに、気づけば頼りになる姉さん的な雰囲気を纏ってた。ムカつく演技が非常に良い。演じたのは千石規子。良い俳優。

こういうクセのない王道なヒューマンドラマは評価しづらい。普通に面白いしか言えない。黒澤らしさみたいなものはあるんやろうか。リドリー・スコットみたいなどんな脚本でも映像化出来ますよという監督なんかな。「三四郎」みたいなダイナミックなシーンとか今作までない気がする。ヒューマンドラマ系が多い。あと三船敏郎の存在がかなり大きいのはわかる。どうしても彼の印象を書いてしまう。存在感すごい。ここまで書いてそういえば冒頭の手術のシーンの緊張感があったことに気づく。まぁそれも三船の演技ありきな気もするけど、色々構図を変えて場の緊張感、主演俳優の演技を余すことなく撮るのも監督の演出手腕。

何故か今作から異様にセリフが聞き取りやすい。カメラの性能変わったとか?Wikipediaに載ってるポスターは何故か今作のではない場面(多分酔いどれ天使)が使われているのも不思議。
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