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ビギナーズのKeNのレビュー・感想・評価

ビギナーズ(1986年製作の映画)
3.8
U-NEXTにて。再見。

「若さは貴重だ。だけど使い方は難しい。」by コリン

めちゃめちゃ懐かしい…
数多くのアーティストたちのPVなどを手掛けたジュリアン・テンプルが“ロンドン版ウエスト・サイド物語”を製作しようとして思いっきりコケた英国製のミュージカル映画作品…(苦笑) これ劇場で観たのか はたまたレンタルビデオで観たのかすら覚えてないが、いずれにせよ一度観たっきり以来の再見。
ユース・カルチャーがテディボーイからモッズへと移り変わりつつある1950年代末のロンドンのノッティング・ヒルを舞台に繰り広げられる いわゆる青春群像劇。
この作品が公開される頃 自分自身がモッズ・カルチャーにはまっていて、この作品にデヴィッド・ボウイが出演し また私の大好きなThe Style Councilの曲も使われているという話を耳にした時、勝手に『さらば青春の光』のような物語になるのではないかと大いに妄想し興奮したのを覚えているが、蓋をあけてみたら こんなしょうもないストーリーで非常にガッカリした記憶が…(苦笑)
しかし、40年近く経った今 改めて観てみると、モッズの世界観とはちょっとばかりかけ離れてはいるけど、これはこれでなかなか面白いミュージカル作品のような気がした。JAZZ界の大物ギル・エヴァンスが音楽を担当し、全体的にJazzyなサウンドが全面に押し出され 1950年代末のロンドンの雰囲気を醸し出し、またジュリアン・テンプルらしいテクニカラー的な配色の使い方がそれにうまくマッチしている。
今 改めて観てもストーリーそのものはショボいけど、人種差別や移民の問題、そしてノッティング・ヒル地区の再開発というかたちで旧きものと新しきものの軋轢などを絡ませたストーリーは本家の『ウエスト・サイド物語』と同様 当時から現代に至るまで普遍的かつ深刻なテーマを扱っている。まぁでも、ミュージカル仕立てだから致し方ないとはいえ、『さらば青春の光』に毒された者としてはやはりもっとリアルな1950年代末のモッズ黎明期のロンドンを見たかったなぁ…。

で、肝心要の音楽の方は先述なギル・エヴァンスの音楽に加え、デヴィッド・ボウイが歌う同名タイトル曲や劇中がボウイが歌うJazzyなミュージカル・ナンバー「That's Motivation」、そしてそして我らがThe Style Councilのお洒落なナンバー「Have You Ever Had It Blue?」や
"Godfather of Ska"ことLaurel Aitken(!)の「Landlords and Tenants」などが効果的に使われていて申し分なし♪更にはシャーデー・アデュがクラブのジャズ・シンガー役として登場し「Killer Blow」というハスキーかつスモーキーなJazzボーカルナンバーや主人公の父親役に扮して登場するThe Kinksのレイ・デイヴィス(!!)が歌う「Quiet Life」など、なかなか見応え・聴き応えある曲やシーンが多く盛り込まれていて、今改めて観ても楽しい♪
あと やっぱりファッションがイイ♪いかにもこれから伊達なモッズどもが続々と現れてくる雰囲気が街中にプンプン漂い、ベスパやランブレッタなどのスクーターが数多く登場するところも🛵

しかし『ノッティングヒルの恋人』で有名なノッティング・ヒルは今でこそロンドンの高級住宅地として名高いけど、かつてはジャマイカやインドなどから移民してきた者たちが多く住むダウンタウンだったとはねぇ…
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