メカ尾崎ジャンボ

伝説巨神イデオン 発動篇のメカ尾崎ジャンボのレビュー・感想・評価

伝説巨神イデオン 発動篇(1982年製作の映画)
3.5
発動篇という名の終着点。ラストシーンにすべてが凝集されている。イデオンの長い旅はラストシーンを見るための、そこに至るまでの長い長い前奏曲という感すらある。
それほどに、あのラストシーンは重く美しく、見たものを虜にする魅力を湛えて、ブラックホールのように何かを異常に引き寄せ続けている。

ラストシーンに富野由悠季の世界を見たような思いがする。
また後年の富野作品の象徴的な面が、予告編のように前駆的に予示的に表出しているのを見ることができる。
肉体を離れ争うことをやめる魂のイメージ、全裸で宙を漂う清純ですらある善性の表現、思念体の万能性・完全性・神性…

富野の世界に没入するためにこれ程適切な作品もないのではないか。ターンAガンダムでは監督のひとつの頂点を極めたように思えたが、イデオンではまた別の頂点をなしていることを画面を通して訴えかけてくる。

イデの発動という、終末であり新たな始まりであるその一点へ向かって一直線に収斂する物語(時に飛躍しながらも)。そのイデの発動の果の果、その先に原液のような富野の世界を見てしまう、そんな作品。

物語の果に、創作の果に作家性が避けられず表出する。作家性に触れる体験があのラストシーンだからか、物語的飛躍にも嫌悪感はない。

作品世界の広がりよりも、富野由悠季本人に興味があるなら是非。そうでなくともラストシーンは見られてよかったと思えるだろう。