皿鉢小鉢てんりしんり

伝説巨神イデオン 発動篇の皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

伝説巨神イデオン 発動篇(1982年製作の映画)
4.3
とてつもないものを見てしまった……
次から次へと人が死んでいくのは、そういうものかと思ったが、ラストはボロボロ泣いた。
あれだけいがみ合い、憎しみ合い、殺し合い、絶望しながら死んでいった全てのキャラクターが、敵味方全く無関係に全員(ほんとにズオウとかすら含めて全員)裸になって、憑き物が落ちたように無邪気に、楽しそうに、幸せそうに、好きな人と抱き合いながら宇宙の彼方へ消えていく。これ以上ないほど陳腐な“救済”表現を臆面もなくやっているが、異常なまでに心を打たれる。それはやっぱり本気で人類を皆殺しにする熱量がこの作品にあるからに他ならないと思う。
『逆襲のシャア』より遥かにストレートに“全員死ねばいい”というメッセージが伝わってくる。シャア的な屈折の方が富野節なのかもしれないが、ズオウ大帝の言う通り自分は「単純な方がいい」の側なので。
とにかくどこをとっても異常な迫力があり、すごいと思う。アーシュラの首があっさりなくなるのとか、“ただの絵”であることが逆にものすごいバイオレンスの即物性を描けている気がする。
カーシャとコスモがキスしようとして、お互いのヘルメットの顎のパーツがぶつかってできないのとか、こんな可愛らしい表現ができるのびっくりした。今まで割と俗悪な生々しい性愛ばっかり描いているので……白石冬美力というのがもちろんあるわけだが。
子どもたちをカーシャが慰めようと、カララはお星様になったと話した後、一人林の中で、天を仰いで「みんな、星になってしまえ!」と呪いの絶叫を上げると、それに呼応するように戦艦が爆発していくショットがインサートされるのとか、とてつもなく演出が良い。
そんなカーシャも射殺され、林が死体だらけになってしまったところで、小さい子どもたちだけが銃を取って戦ってるのがまた良い。守るものがもう死体しかない。
ハルルも素晴らしかった。とにかく芝居がかった大仰なセリフ回しが魅力的で、カララに向かって
「おう撃ってみよ。裏切り者の女の撃つ弾が当たるものかよ!」
と言い放ち、ほんとに当たらないのがたまらなく良いシーン。こういうキャラだからこそ、ラストのダラムに抱き抱えられて、素に戻れたような穏やか表情が、凄まじい感動を与える。