ひでG

八月の狂詩曲(ラプソディー)のひでGのレビュー・感想・評価

3.5
1991年、黒澤明監督遺作前の作品。
公開時から少し経ってレンタルで観たのかな、記憶が定かではないが、初見時は、モヤモヤした感じが残ったが、それは今回も変わらず、何か定まらない印象が増した。

パッケージの写真が本作で最も美しく、安心して観ていられる場面だ。
親戚関係と分かり、ハワイから長崎にやって来たリチャード・ギアが子どもたちが水遊ぶシーン。
監督は、国と国との争いの前に、人と人とか知り合い、触れ合うことが大切(言葉にするとチンケになってしまった、、)だと言いたかったのではないだろうか。

世界のクロサワが当時最もハリウッド(アメリカ)的なムービースターのリチャード・ギアを招いた本作。当然、国際的にも期待が高まったでしょう。
だが、公開に伴い行われた記者会見では、黒澤の意図とは違う、もっと言うと、作品のテーマと一番かけ離れた質問や意見が監督を襲った。
「なぜ、劇中、アメリカ人に原爆投下を謝らされたのか?!」「パールハーバーはどうなんだ!」と、外国人記者に問い詰められた。
この騒動自体、黒澤が嫌がっていたであろう国家間の争いに映画がモロに巻き込まれたもののような気がする。

ただ、この映画自体に、その誤解を払拭する力があっただろうか、、しっかり伝え切ったメッセージを発信できただろうか、というと疑問も残ってくる。

黒澤の作品群の中には世界的な名作も数ある反面、あまり評判が芳しくなかったものも何本かある。全作品を観た訳ではないので偉そうなことは書けないけれど、「ちょっとこのテーマや話の運びは無理があるよな。」てものも数本あると聞いている。僕が観た中では「どん底」がそれにあたるのかな。
でも、それらも画面や人物の描き方の重厚感はあった。クロサワを観ているんだなあ、ってどっしりした重みを感じることができた気がする。

でも、本作には、その逆で、どこか上辺をさらっているような軽さとアンバランスさを感じてしまった。

見どころのリチャード・ギアは後半からの登場。それまでの1時間は、村瀬幸子さんのお婆ちゃんと孫4人の場面が続く。大体の話は、この5人の会話で説明されていくのですが、テンポも自然さもなく、乗り切れない。
なのに、画面はきちっと構図が決まって、何か妙なアンバランスさに落ち着かない。
4人の子どもが長崎の被爆実態に触れていくのは、話としては良いのですが、どこか取ってつけた印象。
孫たちの親(お婆ちゃんの子ども)たちの会話も大衆映画のような軽さ、

よーやく、リチャード・ギアの登場で落ち着いた場面になって来たな、家族の問題と歴史的に悲惨な出来事とが同時に描かれる黒澤映画のダイナミズムが見られたな、と思っていたら、すぐに帰っちゃう。

ありの行列もラストの嵐の中のダッシュも
ちょっと分からなかったし、、なあ、、

僕も黒澤作品の中では一番低い評価になってしまいました。
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