ジェイコブ

男はつらいよのジェイコブのレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
4.0
中学の時に父親とケンカして家出をして以来、テキ屋稼業で生計を立てながら、世を渡り歩いてきた寅次郎。最愛の妹さくらが、柴又の老舗団子屋を営む叔父夫婦の所で世話になっている事を知り、故郷の柴又帝釈天に赴くことに。寅次郎の帰還を喜ぶさくら達だったが、寅次郎の恐れ知らずで無教養な性格が災いし、さくらの縁談を不意にしてしまう。寅次郎は自分が妹の人生を狂わせてしまうと思い、置き手紙を残して出て行ってしまう。その後、奈良を訪れた寅次郎は、恩師の御前様と偶然再会する。そこで彼の娘である冬子に惚れてしまい……。
山田洋次の代表作にして、渥美清の名を知らしめた不朽の名作。1969年〜1995年までに48作が作られ、2019年には特別編が公開された。
本作に関しては、小難しい考察や見解は不要だろう。惚れ惚れするほどの正直者の寅さんが、旅の先で出会う美女に恋して振られ、風の向くまま気の向くままに人生という名の旅を真っ直ぐに生きる。思った事をはっきり口にして、自分に嘘はつかない寅さんは、忖度ばかりがまかり通る世の中で生きる人々にとっては煩わしいとすらも思えるかもしれない。しかし、自分の気持ちに正直に生きるという事は、大人になればなるほど難しいものだ。そんな大人達にとって、寅さんは憧れのヒーローと言えるのだろう。誰に対しても恐れをなさない寅さんも、惚れた女には弱い。そんな分かりやすい性格の弱さも、寅さんの魅力あるキャラクターの一つだ。寅さんの魅力やセリフは、こち亀の両さんや孤独のグルメの井頭さんなど、今も多くの作品に影響を与えている。
古き良き昭和の時代に思いを馳せるに、これ以上ないほどの作。