こつぶライダー

歩いても 歩いてものこつぶライダーのレビュー・感想・評価

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
4.0
わびさび。

是枝監督にしては毒気が薄いだけに地味さは否めないが、一番日本らしいわびさびを感じることが出来る作品だと思う。

放映当時は、それほど話題になった記憶はないが、観返してみると、随所に是枝監督らしさが光っていて楽しめる。

いつも海や夏が舞台になるが、熱気よりも侘しさや切なさの印象が強い。今作も同じような雰囲気を纏いながら、家族の形を描いていく。

是枝作品に切っては切れないテーマとなる"血縁""家族"というワード。
主人公を誰と明記しない中で、観客がこの家族の誰かに自分を置き換えながら、関係性を考えていける工夫があった。
私で言えば阿部寛さん演じる良多に当たるが、見方を変えれば姉ちなみの旦那にもなるわけだ。

当たり前であるが、それぞれに一人の人としての考えもあるし、家族という構成の一員としての考えもある。
ただ、そこって歳を重ねるほどにぼやけてきて、家族だからって何でも話すわけじゃなくなったり、むしろ親を一人の人として客観視できるようになったりもする。

起伏がないストーリーな上、露骨な演技がない分、演者さんの細かい演技の読み取りが必要だが、そこにしっかりフォーカスを当てた演出だからこそ、これだけ万人にわかりやすく伝えることができるのかな。
樹木希林さんと夏川結衣さんの嫁姑関係とかリアル過ぎたし、阿部寛さんと原田芳雄さんのギスギスした父子関係とかも。

物語のパンチがないから目立ってないだけで、小津安二郎の『東京物語』の是枝裕和版って感じ。名作。

それにしても、YOUさんは演技なのかそのまんまの彼女なのかわからないくらいに普段見るYOUさんだったな。
こつぶライダー

こつぶライダー