あなごちゃん

歩いても 歩いてものあなごちゃんのレビュー・感想・評価

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
4.0
2日間の親元への帰省期間という、空間的にも時間的にも制限が課せられたシナリオの中で、親子問題を余すことなく描き出す。

叙情的でさらっと観ていたらいつの間にか引き込まれた感覚。おそらく樹木希林がモンシロチョウを捕まえようと仏間を歩き回ってから「それ」は始まった。会話が叙情的なものから急に技巧的に変化した。さっきまでの淡々とした家族の日常会話が、今までの付箋を回収するようにレトリックなものに変化していった。
「あ」っと引き込まれていったうちに映画は終わった。子供と親を擦れ違わせて終わった。子供は親の思うように全然ならなぬと絶望を日常の中に垣間見たところで終わった。
そうして、しとしとと親が子供に「入り込んでいったもの」が最後を結ぶ。
おそらくこの「入り込んでいったもの」がテーマなのかなぁと思った。どこから?口からおへそからこれから「入り込んでいくもの」。子供は親の思うようにいかないけれども、親の思いもしない一言を受け継いでいく。