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間宮兄弟のshunsukehのレビュー・感想・評価

間宮兄弟(2006年製作の映画)
3.5
この映画は森田芳光監督の「家族ゲーム」と同様、違和感のある演出が行われている。それは、普通とは異なるコミュニケーションの取り方だ。「家族ゲーム」の場合、有名な家族が横一列に並んでいる食卓のシーン、距離が近すぎる会話など。コミュニケーションとコミュニティの基本である家族がその体を為していない。しかし、その関係性を取り繕っている。そこに現れた家庭教師がそれを暴いて一旦叩き壊す。そのあと、ぐちゃぐちゃにされた食卓を家族で片付けているシーンは家族の関係性の修復への微かな光だ。
「ときめきに死す」の主人公は人とまともにコミュニケーションがとれない人物。「それから」の登場人物もコミュニケーションが不器用で目を合わさずに会話する。「そろばんずく」では、同じようなコミュニケーションの違和感はありつつも、会社が学級のチームワークで全てをハッピーに導く。共通するのは、演出手法と同様に、このコミュニケーションの不全をネガティブなものとして解決すべきものと捉えていることではないかと思う。
しかし、「間宮兄弟」で描かれているのは、少しおかしいコミュニケーションの取り方をあるがままに捉えて受入れていく寛容な人間関係であった。それは、解決すべきものではなく、そのままで良いもの。それは森田監督がそのような世の中の変化を感じたのか、それとも、彼が思い至ったあるべき世の中の姿を伝えようとしたのか。いずれにしても、そのあたたかい人間関係は観ていて落ち着きほっとするものだった。
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