シズヲ

渡るべき多くの河のシズヲのレビュー・感想・評価

渡るべき多くの河(1955年製作の映画)
3.3
流れ者の罠猟師と彼に惚れた跳ねっ返り娘のわちゃわちゃ劇。しつこい彼女から逃げ回る男とそれでも彼を追い回す女、やっていることはほぼラブコメである。オープニングから繰り返される景気のいい主題歌も本作のユーモアを際立たせている。開拓時代の物語なのでいちおう西部劇だけど、主役がマウンテンマンだったりヒロインのお父さんが独立戦争経験者だったりで年代的には17世紀末〜18世紀初頭くらいなのが分かる。

往年のコミカルな西部劇に見られる牧歌性がそんなに得意ではないので乗り切れない部分も多かったが、何だかんだで憎めない味がある。お父さんと眼鏡が絡む射撃大会、恋敵(?)であるルークとの喧嘩、無理やり結婚させられる一悶着など、此処の場面でなんやかんやクスリと来てしまう。二枚目なロバート・テイラーとグイグイ攻めるエリノア・パーカーの漫才ぶりにはフフってなる。ショーニー族を相手に二人が共闘するラストのドタバタぶりは楽しい(“死んだふりをするのよ!→石つぶて落下→主人公気絶”の下りで笑った)。

途中で主人公が妻子持ちのマウンテンマンと交流する下り、彼の向かうべき道を定めたという点も含めて味わい深い。さっきまで殴り合っていた相手の娘が重病であることを知るや否や「お大事にな」と案じてくれる荒くれ、何だか憎めないものがあって良い。往年の西部劇に見られるこの手の人情や仁義がとても好き。

幕開けのテロップから開拓期の女性への敬意が示されるけど、これはこれで古典的な保守性の枠組みにおける“女性の物語”なのかもしれない。基本的には純粋な娯楽作なんだけどね。振り返ってみると主人公が関わることになる開拓者一家、ヒロインの兄弟達はやたら沢山いるのに全員地味でパッとしないので妙な味がある。
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