ペコリンゴ

ファイナルファンタジーのペコリンゴのレビュー・感想・評価

ファイナルファンタジー(2001年製作の映画)
1.8
記録。
損失の最終幻想。

世界中で支持を集める日本のロールプレイングゲーム、ファイナルファンタジーのフルCG映画。シリーズの生みの親である坂口博信が監督・制作を務めた。

今の若い世代は知らないかもしれないが、ゲーム会社スクウェア・エニックスは、かつてスクウェアとエニックスという別々の会社であった。それぞれファイナルファンタジー、ドラゴンクエストというJRPG界の二台巨塔を看板タイトルとして擁するライバルであったわけだ。

本作は当時スクウェア在籍で、FFのゲーム作品の多くに携わった坂口が手掛けたものであるが、ゲーム制作の優れた才能が映画制作のそれとは全く異なるという事をある意味証明してしまった作品なのかもしれない。とにかく驚くほどつまらない。

ゲームのFFとこれっぽっちも似つかないことはこの際どうでもいい。元々ゲームの方の世界観や設定もシリーズを重ねる毎に一新され、「らしさ」というものが無いことが逆に特徴とも言えるからだ。

それよりも全く観客の心を掴まないガイア理論(それ自体が悪いとは言わないが)を全面に押し出した設定や、デザイン・性格面共に魅力に乏しいキャラクターたち、8つの生命体を集めるという展開のうち7つが序盤で達成済みというワケの分からない配分のストーリーは、これの何を楽しめば良いのか疑問どころか最早「無」の境地だ。

当時のスクウェアは本業のゲームにおいて次々にヒット作を飛ばす企業であったのだが、本作の約160億円ほどの膨大な製作費がペイできず(というか出来ると思ってたのか?)莫大な負債を抱え、文字通り会社は傾くことになる。事業撤退の危機の中これが最後かもという思いで世に送り出されたゲームの1作目はヒットし会社を救ったが、本作は逆に致命傷を与えることになったわけだ。

元々映画的な演出が多く見られるFFシリーズだけに坂口の挑戦自体は自然だと思うし悪いとは思わない。長期化する制作期間と膨れ上がっていく製作費を前にしてストップをかけられない体制こそ問題だったのではないだろうか。

悪い意味で歴史的な作品ではあるが、今これを観る価値があるかといえば、強くNoと言いたい。最近観た僕が言っても説得力無いけど(笑)