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ピカドンのTnTのレビュー・感想・評価

ピカドン(1979年製作の映画)
4.0
 広島や長崎の原爆の描写って、落とされることが確実であるということで否が応でも日常がサスペンスとして機能する。こういう取り返しのつかない出来事に邁進して避けられないというのが、歴史を学ぶことなんだろうなと。しかし、特に原爆を扱った作品はあの"瞬間"が来ることが嫌で、見るのに腰が重い。

 この映画で、焼け爛れた少年が夢の中で飛ばした飛行機が、現代の空を飛ぶ時、もはや空自体が伝承の媒体となる。空を見上げるだけで思い出すべきなのである。それに対するやたらと光る看板が目立つ描写だった現代の町に、果たしてそれが届いているのかという疑問を投げかける。

 この、絵本のようなタッチからの惨劇への変貌のキツさ。原爆という存在すら認知しないままの最初の原爆経験者たちは、何を思って死んでいったんだろうといつも思う。日常が地獄に、一瞬の閃光で変わり果てるというのを、彼らは死に際に、どう受け止めれば良いのだろう。時折そのあまりの衝撃は、戦争を飛び越えて災害に近い語られ方をしている気がする。しかし、紛れもないあれが人の手によることであることを私たちは肝に銘じなければならない。
 
 何かの本でハリウッドの戦争描写ではスピルバーグが出るまでは身体の損壊描写は避けられており、また腐敗する身体に関しては未だ描かれることはないと書いてあった(やはりアメリカも第二次世界大戦後もいくつも戦争をしているわけで建前上戦争の詳細は語りたくないのだろう)。そうなると、今作はその惨事を克明に描き出しているなぁと思えた。「はだしのゲン」のアニメもそうだが、アニメーションという技術が実写を超えて惨劇を伝えるのに長けているように思える。

 キャメロンがどうやら被爆者を題材にした映画を撮るようで、原爆の惨劇も撮るかもしれないと語っていた。それはどう描かれるのだろうか。

 調べたら監督名、木下蓮三でした。filmarks、間違ってる?
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