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たくましき男たちのKのネタバレレビュー・内容・結末

たくましき男たち(1955年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

南部の漢クラークゲーブルが「ワッハッハ」と哄笑する。
何千頭いるのかわからないほどの牛や馬にガンガン川を渡らせる。
多分流されたり溺れたりした個体もいたはずだが「ワッハッハ」という感じです。

対立から殺害した敵の懐中時計を掠取してそれを投げ上げて仲間と撃ち合う、主人を失った時計は左右から撃たれて空中を振り子の様に行ったり来たりする、何が楽しいのかすごく楽しそうに撃つゲーブル氏、時計が本物の金でないと知ると「持ち主と同じ偽物だ」と嘲り「ワッハッハ」って感じ。
今なら死体蹴りは悪党仕草だが、とにかくクラーク・ゲーブルは正義。

崖の上から幌馬車を吊るし下ろす、崖を牛や馬が滑り降りる。
義経の鵯超え逆落としもかくやと思うほど難所で、馬に乗って視点が高い俳優の技術と勇気に感心する。
牛馬以外の人間にも怪我人や死人が出てもおかしくない様な気もするが
とにかく崖だろうと川だろうと先住民族だろうと突き進む「ワッハッハ」

これだけの大大スペクタルなのにどうやらなんの賞も取っていないらしい。
ある意味凄い。

調べたら制作費は$3,115,000だそうだ。
米興行収入は$5,000,000
同じ55年作品を対象とした28回アカデミー賞を受賞した〈互いに冴えない自分の容姿を気にするあまり恋愛に今一歩踏み出せずにいた肉屋の男と女教師の、淡い恋の行方を描いた〉「マーティ」の制作費は$343,000米興行収入が$3,000,000
ワッハッハ

労働環境の観点・先住民族・ジェンダー・動物愛護・環境問題・国立公園内でのルール的(撮影はメキシコのシエラ・デ・オルガノス国立公園)にも現代では作れない映像だろうなぁと感慨深く観た。


1955年アメリカはティーポット作戦ウィグワム作戦とか核実験が行われていた頃。
モンゴメリーのバスボイコット、公民権運動の端緒となった事件のあった頃だ、翌年にはエデンの東や理由なき反抗がアカデミー賞にノミネートされる。

自信満々と同時にそれ迄の価値観の揺らぎと時代の変化の兆しの狭間にあったアメリカの四尺玉花火の様な作品だと思った。
コロラドの青い空の下、漢クラークゲーブルの「ワッハッハ」を刮目せよみたいな…

あと、川を馬で渡る時、カウボーイは予めブーツを脱ぐのだと言う知見を得た。
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