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野球狂の詩のblacknessfallのレビュー・感想・評価

野球狂の詩(1977年製作の映画)
3.2
かなり遅れてしまったけど水島新司先生追悼鑑賞。
鈴木則文監督がズンドコスポ根ギャグにアレンジした『ドカベン』と迷ったけど観たことなかったし水島先生が出演してるのでこっちに。

野球少年だったから水島先生の作品かなり読んでるんだよ。『ドカベン』『あぶさん』とかの超メジャーどころから『ダントツ』や『一球さん』のちょっと知名度低いのまで。
小6までは少年野球やりながらひたすら水島新司先生の漫画読んでたよ。少年野球の時はちょっとしたスター選手だったんで思えば唯一スクールカースト上位の時代だった。風邪で学校休んだと時に女の子が8人お見舞いに来てくれたし、思えば以後、何回かあるモテ期もここまでのビッグウェーブはなかったな。当時はまだ思春期的な感情が希薄だったからさほど嬉しくもなく、その女の子達に冷淡に接したな。勿体ないことした。せめてもう2、3年後に来て欲しかったよ、ビッグウェーブ、、笑

それはともかく他の野球漫画より水島先生のは具体的な技術のことやゲーム展開がリアル。それで有りながら個性的な選手や打法や投法が出てきてワクワクした。実戦的でいながらトリッキーでファンタスティックな世界観に魅了されたよ。
他はどっちかなんだよな。努力や友情にフレームする『キャプテン』的なのか『アストロ野球団』みたいにぶっ飛び過ぎてリアリティー皆無なのかで。それはそれでおもしろいけど水島先生の作品には敵わない。もうそういう野球漫画が読めないと思う残念でならない。

本作『野球狂の詩』は原作のメインキャラである53才の現役投手岩田鉄五郎と原作後半の主役、女性初のプロ野球投手になる水原勇気の話をミックス接合した作品になってた。
メインプロットは岩田鉄五郎の200勝達成と水原ゆうき入団から魔球ドリームボール完成の2つ。
これはどっちも大ネタなんで1本に入れ込んだのは無理があったかなと思った。どちらも感動的な話なんだけど、何かどっちもあっさりと描かれてしまい盛り上がりに欠ける。漫画では魅了的な岩田鉄五郎のガンコで激情家で人情味のあるキャラクターが伝わってこない。チームのことを考えず自身の勝利だけにこだわるエゴイストのじいさんにしか見えなかった。
それでいながらプロ野球規約で認められない女子の入団の壁を破るため水原勇気入団に尽力し、献身的に彼女をバックアップする良き庇護者になったりするから、ギャップがありすぎて分裂的なエキセントリックな人に見えてしまった。鉄五郎こんなんじゃねえよな、みたいな笑

水原勇気は意外と原作どおりだった。水島先生の女性キャラは複雑な個性を持った人はいないので描きやすかったからだと思う。
水島勇気も普通に芯が強く優しくてひた向きな女の子で所謂、男のインナーワールドにしかいないタイプなんで演出しやすかったんだと思う。木之内みどりも顔の感じが漫画の水原勇気に似てたし、思ったよりよかったな。

でも、だけにドリームボール完成に尽力したイマイチ成績の奮わないキャッチャー武藤をドリーム完成直前にドレードになったところで物語からフェイドアウトさせてしまったのが残念すぎる。原作だと誰も打てないドリームボールをその特性を知る武藤との対決があるんだけど、そこに行く前に終わっちゃうんだよな、、鉄五郎の200勝達成をクライマックスにして。鉄五郎は小池朝夫だよ、クライマックスに持ってくるなら木之内みどりだろうに🥺

あ、それで水島新司先生は岩田鉄五郎と水原勇気と絡むシーンあったけど、何者なのかよくわからなかった。クレジットではファンになってたけど、ベンチに入れてフラットに選手と話せるファンってどんな人だよ笑 風貌から演技?までいつもの水島新司先生だった。これは良かったな。
それと若かれし頃のノムさん a.k.a.野村克也も出演してる。これも加点ポイント。
水島新司先生は水原勇気を描くにあたって女性がプロ野球投手で活躍するにはどうすれば可能か?知り合いのプロ野球選手に質問した時に他の選手は女性なんか無理に決まってんだろ、的なつれない返事ばかりする中、唯一真剣に耳を傾け「ワンポイント・リリーフなら可能性がある」とアドバイスをしてくれたのがノムさんだったというハートフルな秘話があるから、このノムさんvs水原ゆうきの対決シーンは感慨深い。

いやぁ、あんまおもしろくないけど楽しめたな笑
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