留

千夜一夜物語の留のレビュー・感想・評価

千夜一夜物語(1969年製作の映画)
2.5
アニメなのに静止画が多過ぎるし、実写と合成するのは違和感しかない。
当時の有名人に声をやらせるのも志が低いと思う。
青島幸男はまだいいよ、でも北杜夫だの遠藤周作なんて声聞いて当時の観客は分かったのかね?木崎国嘉、安藤孝子なんて11PMのノリじゃん!真面目に作ってよ。
《クレオパトラ》よりずっといいのは題材。
『アラビアンナイト』の世界をアニメで見せるというのは素晴らしい。クレオパトラ当時のエジプト世界を見ることも似たようなものかもしれんが、違いは史実とファンタジー。
ジュリアス・シーザーが緑色の皮膚だと気になってしまうが、ここでの大臣バドリーが青い皮膚なのは気にならない。中盤以降、男女の魔神が突然出現するのも、あまりに唐突でひどい脚本とは思うが、魔神に違和感はない。鉄腕アトムやサザエさんが出てこないのにはホッとする。
女護が島シークエンスもいいのだが、ここでの女たちのキャラクターデザインがどうしても「妖怪人間ベラ」を連想させて、長い髪、デカい目、あまりいいと思えないです。
ただ情交シーンの色やデザインには当時の規制下で精一杯頑張っていると思う。ただここの女がみんな蛇の化身だったというオチには唖然。なぜ?普通の人間でいいじゃん!
セイレーンのギリシャ神話が聊斎志異になっちゃうよ。
《クレオパトラ》同様、音楽は冨田勲だがあまり感心しない。冨田勲の音楽より全編で鳴らし続けられるロックバンドの「アルディンのテーマ」がうるさくて。
『シェエラザード』の第3楽章を前半では使ってたが、全編、『シェエラザード』を編曲した方がよっぽど良かったのに!
日本人ががなり立てるロックより、ずっとエキゾチックでしょ?
ペルシア絨毯を使ったオープニングタイトルはいい。題字もペルシア文字っぽくしてるのはいいのに、あとはずっとゴチック楷書の漢字ばかり。なんで?
一番理解できないのが、海や都市の遠景に実写やミニチュア模型の実写を使ったこと。ぶち壊しだと思う。それを考えると《河童のクウ》の海や自然描写は見事としか言いようがない。アニメの技法も進化し続けているんですね。
下らないおふざけをしてないだけ、すんなり受け入れられる「アニメラマ」でしたが、手塚治虫先生の映画作品が宮崎アニメのレベルに達してないのは残念だなぁ。一番の問題は制作費だったんでしょうね。
潤沢な資金と時間とスタッフで作られた、手塚ワールドのアニメ映画が見たかった。「ブッダ」とか「火の鳥」とか。
留