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千夜一夜物語のmegusukeのレビュー・感想・評価

千夜一夜物語(1969年製作の映画)
2.6
オトナ向けの「ディズニー ファンタジア」をやろうとしたのかな?映画。

漢の夢はでっかく!一旗上げるため、旅から旅へと渡り歩くなノリ
今観ると時代差をびんびん感じる価値観、男女観と、人(主に権力者)の愚かさ、よく深さをアラビアンナイト、女護ヶ島やバベルの塔といった題材をなぞりつつ描いた
メロドラマ的なお話。
全体的に、まだアニメ創世記ぐらいの作品だし、今のアニメーション映画と比べると見辛さは否定できないかなという感想。

良かったところ
・各パートの絵柄も、担当者の個性まんまで描かれる、よく言うと作家性が尊重されていて、悪く言うと統率が取れてない。作画担当さん探しが捗るやつ。ケモノなお色気シーンは完全に手づっ…ゲフンゲフンッの担当パートやろっ!て感じやし、競馬のシーンはやたら東映動画っぽいなと思ったら(他は虫プロとか、テレビアニメのディズニーチックな表現が多い)ノンクレジットで大塚康生さんが担当してるらしくびっくり。なんとか人を集めたのだろうなぁと察した。
・やなせたかしさんのこの作品での美術や色彩設計は今に通づる、リアリティの持たせ方とアニメとしての観やすさの試行錯誤(キャラのイメージカラー設定や、人物と時代背景の掘り下げ方)が垣間見られてよかった。
(キャラデザに関しては、昔のやなせさんの濃い絵柄はあまり好みじゃなかったが。)
・エッチいシーンは抽象表現やメタモルフォーゼが多く、直接的な描写がほぼないので、そこがかえってアニメーターの腕の見せ所になっていて、見応えがあった。
自分が好きなのは女護ヶ島のエロシーン
体の境界が曖昧で、融合していく様な…デヴィッド・クローネンバーグ的な絵と音響が良かった。

良くなかったところ
・予算がなかったんだろうけど、折角の劇場版自主作だがテレビアニメ的セルの省略手法が多くて、これ大画面で見せるのは…て所
・手塚漫画的現代的ギャグが入るシーン、現実に引き戻され、物語に没入しにくくくなる。しかも多い。ジョークスタイルでいきたいのか真面目に話を見せたいのかどっちやねんとなった。
音響の技術や撮り方にバラツキがある点、
これもパート毎に試行錯誤していた感があって気になった。
・ディズニーがやってた実写+アニメの表現をやりたかったのか、ミニチュア作ったり海で撮影したものにアニメを足したり色々やっていたが、必要性を感じなかった。ディズニーでは、「絵本の中に体が吸い込まれた」の表現で使われていたので意味があったけど、この作品はずっと舞台は変わらないので…「物語」感を出したかったのか?でも、ミニチュアの建物からアニメの煉瓦が崩れ落ちるのは、いただけなかった。

アニメーション好きとしてはアニメ史を追いかける意味で「アニメラマ」は外せないし、それなりに楽しめたけど、そういう知識がないと、時代錯誤も甚だしいストーリーだし、辛いと思われる作品でした。
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