イチロヲ

千夜一夜物語のイチロヲのレビュー・感想・評価

千夜一夜物語(1969年製作の映画)
4.0
思慮深い奴隷女(岸田今日子)との悲恋を経験した青年(青島幸男)が、権力至上主義の頑迷な人間へと変貌してしまう。虫プロ製作・日本ヘラルド映画配給「アニメラマ(アニメーション・ドラマ)」の第1作目。

総合エンターテインメントを追求するべく、表現上の自主規制を徹底的に取り払っている作品。キャラデザ担当のやなせたかしをはじめとして、鈴井ギサブロー、出崎統、大塚康生など、精鋭アニメーターが結集している。

演出面では、手塚治虫が大勢の美女をシコシコ(意味深)と手描きしている、「女護島」のドラッグ描写が記憶に残る。手塚作画による特有の曲線が、艶めかしい女体美へと変化。描いたその場で、クネクネと動き出しているような錯覚を覚える。

アニメならではの独自表現が満載であり、「その時代の空気感」を封じ込めてある、サイケデリック・アートの領域に突入している。手塚自身が思い描く「抑圧からの解放」を推量しながら鑑賞するスタイルが得策。
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