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ヴィダル・サスーンのDJLastChristmasのレビュー・感想・評価

ヴィダル・サスーン(2010年製作の映画)
3.6
「世に存在する全てのヘアスタイルはヴィダルが既にやっている」
そんな美容界の巨匠ヴィダルサスーンのドキュメンタリー。

上京後ずっと髪を切ってもらっている美容師さんと度々ヴィダルの話になり、ずっと観ようと思っていた。そのサロンで見たヘアカット専門誌に載っていたヘアカットの美しい展開図に興奮したことを思い出す。

仕事がうまくいかなった時にはハサミを天井に突き刺してしばらく姿を消しマーラーの憂鬱な交響曲を聴いて構想を練ったというクレイジーな無名時代を経て、努力を重ね自身のヘアカット理論を完成させる。

サロンでヘアセットしたら数日は髪型を固定していたという旧態依然としていた美容業界に「wash & go」=「自分で洗って自分でスタイリングできるヘアスタイル」を提示し、世に広める。これは現在も変わっていない。世界の全ての美容師がヴィダルのカット技法に影響を受けているが、我々一般人すらも知らぬ間にヴィダルが提示した生活様式の中にいる。

「私にとってヘアスタイルは、幾何、角度、骨の構造、カット...不均衡な形の集合体だ。それを骨格に合うようにデザインする。」
と語るように、ヴィダルは一点もののオートクチュールを作るデザイナーや、敷地を読み解きサイトスペシフィックな建築を産み出す建築家のように、ヘアスタイルにジオメトリーを与えて一人一人のカットへ挑んだ。

「大学に行っていたら夢だった建築家になっていただろう」とヴィダル自身が語るように、建築の話も度々登場した。

フランクロイドライト、バウハウス等モダニズム建築のめざましい発展を横目で見ながら、建築界以上に美容業界、そして世界を変えてしまった。
勉強になりました。

***
幼少期からチェルシーのサポーターらしく、ジャンフランコ・ゾラの名前も出てきてびっくりした。
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