カタパルトスープレックス

レイニング・ストーンズのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

レイニング・ストーンズ(1993年製作の映画)
3.7
イギリスの労働階級の悲哀を一貫して描き続けるケン・ローチ監督。90年代から多作になっていくのですが、その代表作の一つです。一言で言えば、相変わらず「すべて貧乏が悪い」なのですが、弱い立場のまま抜け出せない人たちは常にいる。

今回の主人公は娘のコミュニオンのためのドレスを買うために四苦八苦する父親です。仕事用のバンを盗まれて仕事ができなくなってしまったボブ(ブルース・ジョーンズ)。もうすぐ娘のコミュニオンで、ドレスを買わなければいけないのに。普通に考えればドレスを諦めればいい。でも、諦められないボブはいろいろ無理をして深みにハマってしまいます。果たして、ボブは娘のためにコミュニオンドレスを買うことができるのか?という話です。

もう、この時期のケン・ローチ監督作品はいい意味でワンパターンですね。抜け出せない貧乏。カタルシスとしての暴力。そして、ほんの少しのユーモア。ロングショットを多用した「引き」のドキュメンタリータッチ。対象と少し客観的な距離を置いている。この作品もこのテンプレにしっかりハマっています。

もちろん、この作品でも思うんですよ。もっと早く努力すればよかったのにねって。でも、努力の出発点って教育なんですよ。貧乏な家庭だと、そもそもいい教育を受けることができない。これが貧乏スパイラルの根幹なんです。せめて、コリーンちゃんはこのままスクスク育って貧乏から脱出してくれたらなあ……と願わずにはいられない一作です。